―移住に賭けた我らが世界―第2章 飛躍期⑫

―移住に賭けた我らが世界―第2章 飛躍期⑫
学移連の「炭鉱離職者の海外移住実態調査」を報じる「海外移住」紙(62年1月15日号)

~もう一つの学生運動~日本学生海外移住連盟外史
外務省外交史料館に残された学移連関連の文書類㊤
足しげく通い「瓢箪から駒」で史料を探し出す

移住関係資料は戦後の移住再開当時だけ

 東京港区にある外務省外交史料館には明治以降の膨大な外交史料が収蔵されている。移住関係では戦後、ブラジルへの移住が再開された前後から数年間の史料が最も多い。ブラジルはじめ中南米各国へ移住者を送り出した時、様々な問題が起こった。その時のやり取りが公開されている。

 ブラジルに関していえば、戦後移住が再開された時、移住先はアマゾン地域だった。当時、ベレンには総領事館などなく事務所だったが、その事務所からは、本省に「受け入れ態勢が整っていないのに移住者送出は一時中止するべきだ」との要請があったにも関わらず、続々とアマゾンに移住者を送り出していた文書も残されている。これらの文書をコピーして積み上げると1メート以上になる。

 この移住関係の史料が公開された当初、マスコミで日本政府の移住政策の失敗が取りざたされ、大きな話題となったことは記憶に新しい。

炭鉱離職者の史料探すが見つからず

 今回、我々連盟史研究会が外交史料館を最初に訪ねたのは、「炭鉱離職者の海外移住実態調査」の史料を探すためだった。第3次海外学生総合実習調査団(72年)団員で帰国後第21期委員長だった駒井明(工学院大)が担当した。学移連と炭鉱離職者がどのような関係があるのか、奇妙に思う人もいるだろう。日本海外協会連合会(海協連)の機関紙「海外移住」の1962年1月15日号に学移連が外務省から委託を受け炭鉱離職者の海外移住実態調査を行ったとの記事が大きく出ていたのだ。

 すでに報じたように、これまで学移連が行った委託調査は海協連から委託されたもので外務省からの委託は初めてのことだった。学移連はこの時期、すでに第1次団を送出しており、外務省から大きな信頼を得ていた。この信頼が、委託調査につながったとみるべきだろう。このため、その報告書が外交史料館にあるのではないかと、門を叩いたのだ。

 この委託調査は聞いたことがなく、「海外移住」の報じた内容が当時の日本社会を的確にとらえていることが理解できた。実態調査の内容は6項目に整理されている。

①炭鉱及び炭鉱労働者の現況

②炭鉱離職者対策

③炭鉱離職者の海外移住について

④現地炭鉱の海外移住状況

 一、三井鉱山田川鉱業所

 二、九州採炭笹原炭鉱

 三、明治鉱業平山炭鉱

 四、大正鉱業所

⑤炭鉱離職者福岡訓練所

⑥神戸移住あっせん所並びに福岡農業訓練所における炭鉱離職者の移住に関する調査

 「海外移住」紙は、「この調査によれば現在わが国における石炭産業の合理化促進対策として労働力の削減が行われこれに伴い炭鉱離職者を生むに至った」と経緯を説明している。

 当時の炭鉱離職者数は4万5千人から5万人といわれ、63年までに11万人の炭鉱離職者が出ると予想されていた。

 調査によれば、58年59人、59年113人、60年543人が移住している。移住先国は、ブラジル692人、アルゼンチン4人、ボリビア12人、パラグアイ7人とブラジルが圧倒的に多いことが分かる。

 この貴重な調査報告者は外務省移住局から刊行されると明記してあることから、学移連の当時の調査能力の高さを知る格好の史料だと考え、探したのだ。

 駒井は、めぼしい資料を目録で探し、マイクロフィルムを見るのだが、学移連、炭鉱離職者関連では、何も出てこず、1回目は無駄足に終わった。

収録目次が間違っていた学移連

 「でも、何かあるはずだ。もっと探してほしい」と再度、調査を依頼した。数年前から学移連の歴史を残したいという信念から独自に資料集めをしていた駒井は、すでに会社を退職し、好きで始めた農業にいそしみ、忙しいときにも拘わらず、再度、外交史料館に足を運んだ。

 目録で「日本学生海外移住連盟」を探しても、わずか数件しか出てこない。それでも、目録を丹念に見ているうちに偶然「日米学生海外移住連盟」の目次を発見した。マイクロフィルを引きずりだして読んでみると驚いた。中身は「日本学生海外移住連盟」だった。外交史料館が目次を入れ間違っていたのだ。

 目次だけでも100件以上あり、到底1日では読み切れない。以後、毎日のように外交史料館に通い、コピーした史料は600ページ以上にわたる。目次が間違っているため、これらの史料を読んだ人は移住関係者でもいないのではないか。このコピーを読んだ同研究会は、すべての史料を年代別に区分けし、内容の概略を記載した一覧表を作成した。これだけ読んでも学移連と外務省の関係は手に取るようにわかる超一級史料といえる。

(敬称略、つづく、鈴)
訂正=連載⑨⑩の文章中第10期委員長の武藤嵩さんのお名前を間違って「崇」と表記してしまいました。お詫びして訂正いたします。

2018年10月12日付

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