―移住に賭けた我らが世界―第2章 飛躍期⑰

―移住に賭けた我らが世界―第2章 飛躍期⑰
カナダ第1次実習調査団団員(今津氏提供)

~もう一つの学生運動~ 日本学生海外移住連盟外史

カナダ派遣の受け入れは農業実習のみ
「季節労働者」扱いで問題も発生

カナダ側の調整遅れで出発は6月にずれ込む

 1965年秋から外務省、移住事業団の支援を受けてカナダ大使館にアプローチ、67年に移住事業団のカナダ事務所が開設されたのを機に、先方の受け入れ体制の整備もあって、6月に第一次カナダ実習調査団(日本大・田中健夫団長以下11名)が羽田から出発した。

 南米派遣と異なり、実態は「農業実習調査団」である以上、募集も農学系学部を対象に行われた。副団長としてカナダに渡った今津武(大阪府大)は「前年の11月に本部役員がカナダ派遣団の説明と募集の案内のため大学に来訪、クラブ内で話し合って応募、3月2日に選考試験を受け合格、愛知県の花卉農家で実習、4月にはカナダ政府の指定する身体検査があった」と当時の日記をもとに振り返った。

 出発の時期について本部では実習期間を長く取るべく5月にと折衝を重ねたが、査証発行の段階で大使館と本国の外務省、マンパワー省の調整が手間取り6月6日の出発となった。出発に備えて5月中旬に団員は東京に集結していたが、結局、査証が発給されたのが6月4日、その間、移住事業団(当時)に頼み込んでの横浜移住センターでの合宿が2週間以上も続き、団員はさぞ不安であったろう。

1次団、2次団の団員は苦労の連続

 当時、カナダは経済発展に伴い、深刻な労働力不足の状況で、移住者(専門技能者、技術者)の受け入れもその解決手段だった。今津は「入国査証は職業訓練用の学生ビザで、現地の出迎えはマンパワー省の職員だった」と述べている。そして、「当初、受け入れ先の農場主は短期の労働力としての扱いだったが、日々の作業での団員が持っている技術的知識や理解度から、質の高い労働力との認識に変化していった」と回想する。

 当初から大使館では「学生」、本国政府では「短期労働者」的扱いで、実際に問題も生じた。オンタリオ州のタバコ栽培農家に配属された千葉亨団員(弘前大)が収穫終了時点で「契約満了」となってしまったのだ。いわば「季節労働者」の扱いをされたといえる。本部としても寝耳に水で、千葉は実習場を出ざるを得ず、帰国までの間、支給された給料が先細る不安な日々を過ごしたと述べている。

 続く、翌年の2次団には女子団員2名を含む13人が選抜され、本部から大使館にリストを提出、事前準備合宿も行っていたが、土壇場になって10人分しか査証が発給されないとの通告があった。この期に及んでのまさかの事態であったが、除外する3人の選択は本部に任された。これに関しては1次団の千葉団員の契約完了問題同様に、大使館査証部と本国との意思疎通に問題があったと思われるが、「3人の方には大変迷惑をかけてしまった。1年間という休学期間を有効に活用するため不確定な中でも準備せざるを得なかった」と当時の役員は述懐している。南米派遣団のように身元引受人が決まっている派遣との違いがあった。

 その2次団であるが、団長だった石井紀久三(日本大)によれば「10人のうち、5人はトロント到着時点で配属先が決まっており、マンパワー省面接の後、迎えに来たボスと共に出発、残りの5人はYMCAで2日間過ごした後に、移住事業団(当時)駐在員も加わった面接で実習先が決まった」とのことであった。また、実習期間中の団長の役割について、「実習の辛さで荒んだ手紙がくると、休みに出かけて行ったり、団員同士の仲たがいを仲裁したり、とにかく無事に全員の実習を完了させたい気持ちが強かった」と述べている。彼らは1次団からの申し送り事項であった、オンタリオ州の日系人のホームを訪問して1泊、それぞれがお国自慢の民謡を披露し、遠く故国を離れた人たちを慰問、老人が涙を流して聞いてくれたとの逸話を残す。

 1960年代半ば以降は日本の経済発展による南米移住者の減少、カナダへの移住開始、国家間の経済格差による南北問題、中南米諸国での政変、移住事業団と技術協力事業団の合体など「学移連」を取り巻く大きな変化のうねりの中で、杉野教授亡き後、後藤連一日大教授の親身の指導で活動を継続していくことになるが、連盟の役員は偉大な先輩たちが掲げた「海外移住」の冠名と出身大学のクラブ活動との乖離に悩むことになる。

(敬称略、第2章おわり、鈴)

お断り=第2章飛躍期は今回で終了しました。12月上旬より第3章「転換期」を掲載します。【編集部】

2018年11月24日付

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