【2011年新春特集】「ブラジル八千代工業」

亀井定男社長

 ブラジル製ホンダ車に樹脂製フューエルタンクを供給する事を主な目的に設立された「ブラジル八千代工業自動車部品有限会社」(亀井定男社長)は昨年10月、サンパウロ州内陸部に位置する工業の町リメイラ市郊外のアニャンゲーラ街道142キロ地点に年産22万台の生産能力を有する製造工場を完成させた。

 現在生産機械が搬入中でこの1月から試験運転に入る計画、10~11月からの稼動が始まると駐在員の社長、副社長、経理担当重役の3人を筆頭に40人の社員が製造に従事、近隣するスマレー市ホンダ工場で生産される次期モデルのシビックから樹脂製フューエルタンクの供給を開始する。
 樹脂製フューエルタンクは鉄製のそれに比べ、軽量で錆びない特性があり耐久性にも優れ、かつては唯一の弱点であったガソリンの透過を防止するために4種6層の樹脂製タンクを開発。複雑な形状加工も容易で設置空間の有効利用が可能になる。

 結果、ホンダ・フィットに見られるように外観からは想像もつかないゆったりとした車内空間を実現させる。
 さらに安全面とリサイクル面にも効果を発揮して車輌火災等においてタンクの温度が上昇した際、鉄製は燃料が気化して爆発を起こす危険性があるが、樹脂製は溶解してしまうので爆発を避けられる。
 リサイクル面では生産中に発生するバリ(鉄板部品のスクラップと呼ばれる廃材)も粉砕して再利用でき、工場から排出される廃棄物の削減といった環境保護の視点にもしっかりと着目している。

 さて、年内にブラジルでの製造を開始する同社にはもうひとつ注目すべきものがある。
 埼玉県狭山市の本社工場では現在、出稼ぎで日本に言った3人の日系ブラジル人が今年からリメイラ工場に勤務するために研修している。
 現場の各要所を支える班長クラスの人材として、八千代工業がブラジルに帰国することを条件に日本で募集採用した。在日ブラジル人に対しても大きなチャンスを提供したことは、人を大切にする企業体質の表れとして称賛に値する。
 ここで八千代工業の日本側本社について紹介しておく。

 同社は1947年に大竹榮一氏が機械部品の塗装加工を業務とする大竹塗装所を東京都板橋区に個人事業として創業したことに始まる。
 51年、ホンダ製二輪車の部品塗装を開始。53年には企業法人「八千代塗装株式会社」を設立してホンダとの本格的な取り引きが開始した。その後、自動車市場の拡大に伴い、燃料タンクやサンルーフの部品事業で開発から生産まで一貫した生産体制を構築。

 2006年12月にホンダの子会社となり、現在ではホンダ軽自動車の全量を受託生産する完成車事業も手掛けている。
 今後はすでに兆候の現れている環境問題や石油資源の枯渇など自動車産業を取り巻く状況変化を認識していくとした上で、「これに対して柔軟俊敏に対応できる企業だけが生き残り、今が大企業である事など将来への何ら保証にならない」と本社の加藤正彰社長は語っている。
 ともかく11年に稼動を始める同社、1970年代以来のブラジルブームに湧く日本企業の教科書的企業運営が期待される。

2011年1月1日付

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