「老い」について考える 第1部②

熟連の黒板には毎日の予定がびっしりと書かれている(2012年10月)

支えるのは家族と日系社会

ブラジル日系熟年クラブ連合会(五十嵐司会長)に集う高齢者の多くは、一人暮らしが多い。しかし同連合会の玉井須美子副会長は「孤独!? そんな暇はないわ。毎年11月は芸能祭。12月は忘年会がたくさんあるし、福祉施設の慰問もある。老人会は年末が一番忙しいのよ」と笑い飛ばす。趣味や仲間を持つことで老後の自由な時間をうまく活用できている。
記者が取材した昨年10月下旬は、毎月第4水曜に行われる「鶴亀(つるかめ)会」の例会の日で、17人がビンゴに興じていた。確かに熟連の廊下に掲げられた黒板には小さな字でびっしりと毎日の予定が書き込まれている。カラオケ、ダンス、麻雀、書道、絵画、俳句など挙げればきりがなく、皆が熟年の春を謳歌(おうか)している。

子育てや家事から解放され、夫を亡くした女性は輝くことが多いと言われるが、彼女たちを見ていると納得できる。彼女たちの多くは近所に子どもの家族が住んでいるため、安心して暮らしている。もし、彼女たちがさらに年を重ねて病気になったとしても、このきずなは大きな支えになるだろう。
ただし、南カヨ(仮名)さんが入居している老人ホームの施設長は「一人暮らしの高齢者でも、元気なうちは老人ホームに入ろうなんて誰も考えない。自分1人で生活できなくなって初めて、老人ホームのことを考える。その時には自活ができないとの理由で施設には入れないこともある。何よりお金が無いと入れない。子どもも仕事が忙しく、親の介護ができないことが多い」と高齢化が進むコロニアに老後の準備を促す。

また、サンパウロ日伯援護協会福祉部ではさまざまな相談業務を受けているが、10年以上前から家族と同居しているにもかかわらず、家庭内で居場所が無いという高齢者の相談が増えている。サンパウロ市などの都会では子ども夫婦が共働きしている家庭が多く、孫は一日、学校やスポーツクラブなどで過ごすことが多い。そのため高齢者が1人で留守番し、同居しているにもかかわらず、一日中テレビと向き合った生活になっているという。

また、友人や家族とのきずなを保てない人も多数おり、そういった人の多くは日本の親戚との連絡を絶っており、日系社会の外で孤独と貧困に耐えながらひっそりと生きている。恥ずかしいから表に出ない、といった感情もあるのだろうか。日系高齢者の実に6人に1人が一人暮らしで、孤独な最期を迎えている。日本移民はさまざまな場で「成功者が多い」と語られるが、現実はそうでない人もいる。
当然の話ではあるが、移民の「老い」を積極的に支えるのは結局、家族と移民社会(日系コロニア)しかない。移民は最後まで移民なのだ。(つづく、植木修平記者)

2013年5月11日付

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