「老い」について考える 第2部 終

敷地内にある故渡辺マルガリーダ氏の記念碑

入園困難な日系福祉施設

日系人向けの介護施設不足も現在、深刻な状況にある。
憩の園を例に取れば、2011年の1年間に475人が入園申し込みを行った。しかし、実際に入園できたのはそのうちわずか16人。現在施設は満床で、新規入園するには入園中の人のベッドが空くのを待つほかない。いつ空くのかも分からない状態のため、基本的に憩の園では入園待機はすべて断っている。

この入園申し込みをした475人のうち、入園者本人が申し込みを行ったケースはわずか3%に過ぎず、残りはすべて家族や知人による申し込みとなっている。入園の必要に迫られていながらも、断られてしまうケースが多いことがデータから見受けられる。
もちろん、憩の園では断った人たちに対して他の介護福祉施設の紹介なども行ってはいるものの、日本語サービスや日本食の提供を行っている日系介護福祉施設はわずかだ。さらに、要介護者向けの特養ホームを備えている施設となると、近辺には他に援協の運営する、あけぼのホームしかない。しかし、あけぼのホームも満床に近い状態にあり、仕方なくブラジル人経営の施設に行く人も多いという。

日系福祉団体としては現在、援協が「神内プロジェクト」と銘打ち、約100人収容の特養ホームをあけぼのホームの敷地内に建設する計画を打ち出しているが、同特養ホームは日系人だけのために建設されるわけではない。
憩の園開園に尽力した故渡辺マルガリーダ氏は、「人間は年を重ねると子どもへ還る。なので、日系の老人の方にも故郷の日本を提供できるように」という考えを持っていた。日本のような環境での最期を渇望しながらもかなわない日系人は、今の状況を見る限りだと今後ますます増えていきかねない。

急速な高齢化は日系コロニアに限った話ではなく、ブラジル社会全体にも言えることだ。出生率の低下と医療技術の向上によって、ブラジルは2025年には世界で6番目に高齢者の多い国家になるとみられている。こうした状況の中、将来的にブラジル社会全体が高齢化に追い付かず、老人福祉の質の低下が懸念される。

憩の園では現在敷地内の多目的ホールにおいて、周辺地域の老人を対象に予防医学を始めた。敷地の散歩などを行い、介護の要らない健康な老後を過ごしてもらう狙いがある。
日系コロニアがどんどんと縮小し、老化していく今後、日系介護福祉施設に入れる保証はどこにもない。状況の好転も望めない今できる精一杯のことは、せめて健康な間から予防医学に努め、介護を必要としない老後を送り続けることである。(第2部おわり、毛利健人記者)

2013年5月18日付

コメント0

コメントを書く

Login

Welcome! Login in to your account

Remember me Lost your password?

Lost Password