【解説】JHと日系諸団体 相互補完関係の構築を

 中前氏は在サンパウロ日本国総領事時代、「本省から、企画に関して役人は口を出すな、と言われている」と苦笑いし、公言していた。今回の講演会でも同じことを説明していた。サンパウロでは日本人、日系人は早くからJHに大きな関心を寄せ、「一緒に何かできるのでは?」という期待があり、様々な形で各団体がアプローチしていた。

 しかし、中前氏は「JHは文化紹介の施設ではない。開館していろいろなイベントを見ていただいた上で考えてほしい」と説明行脚に余念がなかった。日系コロニアは、「我々が100年かけて身銭を切って日本文化を普及してきたことを評価せず、自分たち(日本政府)だけで高額な税金を使って、我々を無視するのか」と不満が鬱積(うっせき)していた。JHの様々なイベントを見たコロニアの人たちが、どのように考えているのか分からないが、ぜひ感想を聞いてみたいと思う。

 中前氏によると、JH入場者に対して行ったアンケート調査で、「日本に対する考え方が変わったか」の質問に、60%の人たちが「変わった」と答えたという。この数字は大きな意味を持つ。JHが目的とする「戦略的発信」に大きな効果が出ているということに他ならないからだ。

 これまで日系コロニアが行ってきた日本紹介は、移住者が日系人に対して日本語も含めた文化を継承していくことを主眼とした内向きの活動だった。最近、各地で行われている日本祭りはブラジル社会を対象にはしているものの、それは単なる物珍しさも手伝った一過性のものでしかない。それは、それで大きな意味があり、重要なことである。中前氏も講演会では「JHは移住者が築いた土台の上にさらに重ねていく」と日系コロニアの功績を高く評価しているし、JHと日系コロニアの棲み分け、連携の重要性も今後の課題だと指摘している。

 サンパウロJHが最初に企画した「竹―ある日本の歴史」(5月6日~7月9日)を中前氏は説明した。ブラジルは世界最大規模の竹が自生しているが、その使い道は竹竿ぐらいしかない。ところが、日本では「5000種類もの使い道があり、日常品が芸術品へと昇華されていったという。この展示を通して、竹というものの背後に竹を生活に取り入れた日本人がいて、その背後に日本の歴史が隠されている。

 この話を聞くと、JHと日系コロニアの日本や日本文化へのアプローチの仕方が異なっていることがよく分かる。中前氏の言う「棲み分けと連携」は必要だし、そうしなければ、意味がない。簡単に言えば、日本、日本文化などを紹介するのは、JHと日系団体は相互補完関係と考えるべきだろう。

 役割分担が決まったとして、日系諸団体は考えなければいけないことがある。日本もどきのいい加減な日本文化を見せるのではなく、質の高いものを提供する必要がある。そして、日本文化から日系文化へと変質したものについては、新しい文化として説明することも必要だろう。世界最大の日系コロニアのあるサンパウロで、JHとの協同は誰もが期待する。来年の移民110周年にその連携が進めば、素晴らしいと思う。(鈴)

2017年8月10日付

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