ブエノスアイレス紀行② 亜国の韓国系社会を伝聞

ブエノスアイレス紀行② 亜国の韓国系社会を伝聞
同地で韓国人が多く住む地区。一見しただけでは分かりづらい
 今回のブエノスアイレス滞在で、同地の日系社会に触れる機会はないかもしれない。そう思うと、せっかく韓国系2世が二人揃っているのだから、同地の韓国系社会について聞いてみようと思った。

 ジェシカもクリスティーナも韓国系2世。スペイン語が第一言語だが、2世だけあり韓国語も堪能で英語も問題なく話せる。2人によると、同地にあるアジア系社会で一番大きいのは中国系。次に韓国系、そして日系だという(ウィキペディアの情報では日系人の数が2番目に多い。しかし、彼女らが同地で生活している感覚では韓国系のほうが多いのかもしれない)。12歳までの生徒が入る韓国人学校が1校だけあり、子弟教育も行われている。

 まずジェシカに韓国系社会について聞くと、「私は好きじゃない」という答えが返ってきた。それはある種、想定していた答えだった。というのも、大人しくて控えめというステレオタイプなアジア系の女性とジェシカはまったく異なる性格。言いたいことは言うし、やりたいことをやり、着たい服を着る。そんなジェシカは、厳格で保守的な韓国系社会では浮いてしまうのも無理はない気がする。

 記者はジェシカのそういう部分が好きであり、仲良くなったのはお互いアメリカでアジア系の枠組みから少し外れていたからだったと思う。「間違った体に生まれてきたと思う」とジェシカは常々言っていた。「韓国人社会では私が韓国人っぽくないからって、ああしろ、こうしろとうるさい。それに、いつも人の噂話ばかりしている」と呆れた表情を浮かべた。

 だからと言って自らのルーツである韓国が嫌いというわけではないし、韓国系という誇りもある。「アルゼンチン人はあまり働かないけど、私たち韓国系は一生懸命働く。だから経済的に成功もしている」と誇らしげに語った。それに韓国の食べ物や文化は大好きだそうだ。

 クリスティーナが語るには、同地の韓国系社会は非常に伝統を重んじているという。特に1世は韓国文化を大切にしており、次世代への継承に熱心に取り組んでいる。それと同時に、亜国社会への同化も積極的であり、その辺は今日のブラジルの日系社会に似ている。

 また、移民の歴史が浅いので、2世には特有の感覚があるようだ。ジェシカは「私たちみたいな若い韓国系には2つの人格がある。両親や祖父母と話す時の韓国人の人格、また同じ韓国系や亜国人の友人と話す時の亜国側の人格」と話した。それを聞いて、戦前や戦後すぐのブラジルの日系2世が感じていたことと同じような、2つの国で揺れ動く感覚を有しているのだと知った。

 同地にあるアジア系差別にも触れ、「ブラジルの日系人がうらやましい。ブラジル社会で日系人は尊敬されているでしょ。ここでは白人とそれ以外の人種では違う対応をされる」と、こぼした。

 この韓国系社会の話題ではジェシカの視点で語られる話が多く、実際はもっと違っているのかもしれない。事実、クリスティーナは少し不満げだった。いつか機会があったら、より詳しく同地の韓国系社会の生の声を聞いてみようと思う。その前に日系社会の取材をすることが先決だが。(つづく)

2016年1月21日付

コメント0

コメントを書く

Login

Welcome! Login in to your account

Remember me Lost your password?

Lost Password