ブラジルの未来を切り開く日系人経営者 (92) 大城 アルミール 博和 ㊤

ブラジルの未来を切り開く日系人経営者

『正直と信用』でフォルクスワーゲン社と絶対的な信頼関係
ウチナーンチュの心が築いた州内第1位の自動車販売代理店

大城アルミール博和 デスカウトール 社長

 サンパウロから西北へ約1100キロ、南マット・グロッソ州の州都カンポ・グランデに着くまで、緑の絨毯を敷き詰めたような農地と牧場が切れ目なく果てしなく水平線の彼方まで続いている。空から農業大国ブラジルを実感できる一例だ。州都のカンポ・グランデは19世紀からの町で人口は約95万人。20世紀初めからサンパウロとは鉄道で結ばれていた。日系人は約2万人が住んでいるが、約60%は沖縄県系人で約4500家族が暮らし6世も誕生している。通称・オキナワの町ともいわれるカンポ・グランデでは、沖縄県系出身者のウチナーンチュは、医者、歯医者、弁護士、会計士、学校の先生、公務員など、自治体の構成には欠かせない、社会が必要としている人材を数多く輩出している。また同市内には「沖縄そば」を売るレストランが約30軒、本場の沖縄県に負けない旨さで週末には数千人がこの味を求めてやってくる。最近その「沖縄そば」が同市で第1位の郷土食に認定され、沖縄県系人が同市発展に尽くしてきた貢献度は極めて高い。

 今回取材した大城アルミール博和は沖縄から移住した父を持ち、父が67年に創業したフォルクスワーゲン(VW)社の自動車販売代理店・デスカウトール社(本社・カンポグランデ)を、飛躍的に発展させた創業型2代目社長で知られる。「ブラジル大城家は誠心誠意やユイマール(相互扶助)など、1917年に18歳で移住した時に父・武盛が持ってきた沖縄の伝統文化を継承し家族の伝統として守っていくこと」を精神的なバックボーンに掲げている。同時に会社の使命と役割について「企業というのは金もうけだけでなく社会面での貢献が重要」と会社としての社会的使命と役割を創業以来実践している。金儲けだけに走りがちなブラジルの会社の歴史で、これほど明確な企業理念と会社の信条を貫いている例は数少ないと思われる。

 そこでまずデスカウトール社とはどのような会社なのか、その全体像をみてみよう。同社の中興の祖として会社を拡大してきた大城が、35歳で社長になった当時の会社の規模と現在を比較すると、36年前当時の社長就任時では、社員が75名で毎月80台の新車を売っていた。当時ブラジルの車の生産会社は4社だけだった。それがいまブラジルには車の生産会社が28社あり販売競争が激化している中で、毎月新車を320台売り、中古車を180台売り、南マットグロッソ州で1位の販売会社になった。州内にはカンポ・グランデ市内に本店を入れて2か所、主要都市に4か所の販売代理店を持っている。社員数は250人が働く。さらに販売市場における同業他社との比較では「州内の販売台数でいえば、昨年は2位だったが今年は1位になるだろう。7月以降は対前年同期比で15―20%の販売増を目指している。来年も1位になれると確信している。理由はVWが次々と売れる新車を市場に投入し販売攻勢をかけられるからだ」。同時にカンポグランデ市内にある本店の敷地面積は1万7000㎡、2階建てで建坪面積9100㎡ある。1階にあるVW車の売場面積は1600㎡。同じ敷地内にある修理工場は6000平方mで1日当たり80台の修理能力を持っている。同時に車の自動塗装機も2台ある。一般的な車の販売店の常識を超えている店といえよう。

 ドイツのフォルクスワーゲン本社からも世界の優良販売店として度々表彰されている。世界中で1か国1代理店しか表彰されない最高の販売代理店の証であるダイヤモンド賞も受賞し、大城夫婦もドイツ本社に招待された経験を持っている。次のランクであるゴールド賞は何度も受賞している。昨年創立50周年を迎えてここまで会社が成長した理由は「VW自体にブランド力がある、社員教育に力を注いでいる、創業時から本業に徹している」の3点を挙げた。

 しかし、いま州内で1番の自動車販売代理店になっているが、会社存亡の危機も社長として経験している。それは80年代のハイパーインフレ時代を乗り越えた95年以降06年までの11年間だった。この期間はその後遺症で苦労した時期だった。VW本社もブラジル工場の閉鎖まで考えていた。さらに企業文化の異なるVWとフォードが工場を共同運営していた時期とも重なりその時が最も苦労した。しかし「この時でも会社の閉鎖や商売替えは全く考えていなかった、親の代からの名前を消すわけにはいかなかった。孤立無援、たった1人で頑張ってやってきたが同業者の会合が励みになった」。その結果、いまはVWとデスカウトール社は取引を始めて以来絶対的な信頼関係で結ばれている。

 そこでデスカウトール社はどのような自動車販売代理店なのかを大城に聞くと「67年にVWの販売代理店になって以来、VW社とはトラブルを起こしたことは1度もない。開業以来、過去も現在も、そしてこれからも、VWとの関係を最重視しVW車一筋の販売代理店として生きていく方針」だ。ちなみに大城は南マット・グロッソ州自動車販売代理店協会の副会長を務めているが、会長職も経験しており、業界の重鎮としてその発展に尽力していることでも知られる。こうしてデスカウトール社はひたむきな努力と正直さで盤石な会社を築き上げた。(つづく、敬称略 文責カンノエージェンシー代表 菅野英明)

2018年5月23日付

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