ブラジルの未来を切り開く日系人経営者(4) 松田 典仁 会長

松田典仁会長

稲盛哲学との出会いで開眼した経営者
隙間産業精神に徹したオンリーワンの人生
MNグループ
松田 典仁 会長

 サンパウロの郊外都市であり日系人が多く暮らすモジ・ダス・クルーゼス市(ブラジルサッカー界のスーパースターであるネイマールの出身地)に本社を置き、いま日本でヒット商品になっている『蜂蜜入りスプレー式プロポリス』を生産している会社がMNプロポリス社。品質力に支えられ一度なじむと手放せない利便性と簡易性のある健康補助食品と評価され歌手の坂本冬美も愛用しているほどだ。

 この商品を世に出したのが隙間産業精神に徹しオンリーワン企業を目指すMNグループ会長の松田典仁だ。同業他社のプロポリス生産は家内工業的製法で生産されているが、この中にあってMN社産プロポリスは製造業そのものの生産工程に沿って製品を工場で生産している。安全、清潔を前提にして、原料の科学的管理及びその分析、生産過程における厳しい品質管理、さらに販売する商品には製造物責任のPL保険にも加入している。わずか30ミリリットルというプロポリスの小瓶の中に松田の命と魂が込められている。

 創業は1982年で社歴は今年で34年目になる。ブラジル日系人が経営する会社ではMNグループの経営理念には独自性がある。『健康で明るく、隙間産業精神に徹し、オンリーワン企業を目指し、だれにも負けない努力をする、また全従業員の物心両面の幸せを追求し、心を高め利他の心で経営し、社会に貢献する』と創業者である松田の考えを反映したものだ。同時にモノづくりに徹するメーカー志向の企業理念はこうだ。『「安全」「安心」「こだわり」のMN製品、品質と信頼の「MN」マーク』、と製造業へのこだわりを貫いている。

 グループ会社はMNプロポリス社(和田カルロス社長・日系3世)、CETAL食品分析センター(所長はサンパウロ大学原子力研究所元総合研究官で PHDの肩書を持つ松田夫人の春子)、所有面積1300万平方メートルを持つMN養蜂研究センター、MNラーメン(柏葉ジョエル社長・日系2世、店舗経営 と麺類の生産及び卸販売)の4社から成り立っている。グループ社員数は約100人。主要販売先はブラジル国内=サンパウロ及びリオデジャネイロ他、アジ ア=日本・中国を中心とするアジア全域、ヨーロッパ=フランス・ドイツを中心とするヨーロッパ、南北アメリカ=米国を中心とする南北米など、世界規模での 商売を行っている。

 松田はベンチャー精神旺盛で稀有な日系人経営者だ。特に好奇心と探求心は際立っている。販売している 総商品数は全部で70品目に上る。ユニークさのある商品開発では、マンジョカを原料にブラジル産焼酎『銘酒オーガニック伯魂』を生産販売している。更にそ の技術を応用し、オーガニックエチルアルコールも毎年2万リットル以上製造し販売している。また食材にもなり化粧品の原料にもなる蜂蜜の粉末をブラジル初 の農務省の認可(SIF)を得て製造販売し、さらにラーメン店「MNラーメン」を2012年に開業させているが、自社生産の塩麹も入っている麺やスープの 旨みはグループ会社のCETAL食品分析センターで最適な味覚を追求し、製造業の視点からラーメンを商品化した点がいかにも松田らしい。先のグループ4社 を擁し「製造業の原点である分析力と技術力には絶対的な自信がある、従って品質力に拘った最良品を安定して市場に供給できる」と品質力第一の自信を語る。

  ここで経営者・松田を語る時に京セラ名誉会長である稲盛和夫が主催する盛和塾の話を抜きにしては語れない。盛和塾は約8760社、71塾の企業(日本を中 心として、中国、米国、ブラジル他)の経営者が稲盛哲学を学ぶ勉強会で、盛和塾ブラジルは海外初で1993年に設立された。松田はその第1回目の勉強会か ら参加している稲盛哲学を信奉する経営者の一人。「この勉強会への参加が経営者として自己改革の契機になった、利他の心(他人に施すことが自分への恩恵と なって返ってくる)をはじめ稲盛哲学は経営者としての自分を支えてくれる精神的なバックボーンになっている」。MNプロポリスの全社員が参加して毎週月曜 日に行われる社内勉強会は開催して以来250回目を超えているが、毎回、稲盛哲学の講義及び実践と松田イズムを反映した勉強会である。『松田と全社員との 心と心が通じ合う新たな松田ファミリーという企業文化が誕生している』。

 60年に23歳でブラジルに農業移民で来て以来、毎年6月18日の移民記念日には松田はいまでもたった1人でその日を過ごしているが、その理由は「私が現在あるのは戦前移民から続く先達移民のお蔭だ。私にとってはこの方々に感謝しご冥福を祈る一日だ」。

  群馬県からブラジルに移住して54年目、ブラジル群馬県県人会会長を2006年から2期4年務めているが、「私は移民の子」として自負し、同時に「大和魂 が私を支え続けてきてくれた」と生粋の日本精神も継承している。曲がったことが大嫌いで負けず嫌いという上州人気質丸出しの松田はブラジルの地で日本人以 上の日本人になっている。その松田に日本に言いたいことは何か、と質問したところすぐに返事が返ってきた。「日本人は明るくなってほしい、男性は男として 誇りを持ってほしい、日本人は国家と国旗に愛着を持ってほしい」。常日頃ブラジルから日本を懸念している証でもある。

  「ブラジルに移民で来て以来、本名は松田典仁だが私はいつも松田『夢』仁(ゆめひと)と思っている。夢なき人生は無に等しい、人生すべてに感謝しつつ夢と 志を終生貫きたい、もちろん私にとって終生の地はブラジルだ。ここに来るまで七転び八起きの人生だったがブラジルに移民して本当に良かったと心から思って いる」。(敬称略、筆者=カンノエージェンシー代表・菅野英明)

2014年3月18日付

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