ブラジルの未来を切り開く日系人経営者(82) 宮本 岩旺(いわお)㊤

ブラジルの未来を切り開く日系人経営者

大豆種子生産会社としてブラジルで第3位の評価
ロンドリーナを拠点に北パラナを代表する日系人経営者


マウアー種子企業グループ創業者 兼 社主

ブラジルの大豆種子分野で、商品価値の高い高品質製品を提供し、単位面積(ha)当たりの増収に繋がる品種改良など、大豆生産の底上げを根底から支え続け、飛躍的に業界を発展させた重鎮として知られる人物。それが宮本岩旺で全伯規模の知名度を誇る事業家だ。1942年1月生まれで先月76歳を迎えた。パラナ州第2位の都市であるロンドリーナ市に本社を置くマウアー種子企業グループの創業者であり社主も務める。同社は大豆と小麦の種子生産及び販売を行っているパラナ州最大規模の種子会社で、同州の大豆生産用種子市場で7%のシェアを誇るリーダー会社になっている。自ら創業したマウアー種子社はいまから44年前の74年に設立された。現在、ブラジル南部では最大級の会社になっており、23年前の05年にはブラジルの代表的な週刊誌『VEJA』の記事で「世界の多国籍複合企業体のMonsantoやSyngentaなどと競いながら、大豆種子生産会社としてブラジルで第1位、一般種子生産では第3位」と評価された実績を残している。因みに同州の昨年の大豆生産量は約1663万トンで日本の総輸入量より多い。

 そこでマウアー種子社とはどのような会社なのか、誕生までの背景を見てみよう。サンパウロ総合大学の農科で修士課程を卒業した後、68年から家業のコーヒー園を経営していた。家業を手伝いながら、69年からコチア産業組合の農業技師として就職し、72年からは同組合北パラナ支部で大豆と小麦の種子生産を担当した。同支部は当時、パラナ州で最大の種子生産量を誇っていた。74年、ブラジル政府は農業大国を目指す国家戦略として、穀物の所蔵施設拡大と高品質の種子生産を目的として、低金利でかつ長期支払いの融資計画を打ち出した。商才があり時代の流れを読み切る先見性と決断力に秀れていた宮本は、このチャンスを生かすべく大豆と小麦の種子生産会社を設立した。本格的な事業家人生を歩む転機の瞬間はこの32歳の時だった。同時に新たな経営者人生が始まったのであった。

 まず飯のタネになる種子の生産は天候に左右されるといわれる。しかも高品質の種子生産を目指すことは会社としての基本方針であった。そこで生産地調査の結果、最適な地はパラナ州でも気候が種子生産に最も適している地として『マウア・ダ・セーラ地方』に決定した。山脈地帯に位置し標高は1100メートル、年間平均気温は他の北パラナ地方より6度低い。そして共同経営者として、ミヤモト・トモアキとスナダ・シンジの2人の農業技師も参加した。さらに種子の原料生産は、同地方に住む日系人農家12家族との分益制度で開始された。準備万端の態勢を築いて新会社は立ち上がった。

 81年にはゴイアス州に大豆とトウモロコシ栽培のために1700ヘクタールの農園購入、82年にはマットグロッソ州の8500ヘクタールの農園購入とともに、5000ヘクタールに大豆を植え付け30万俵(1俵60㎏)収穫した。

 そして現在、同社の事業規模は、45ヘクタールの敷地に、倉庫面積3万平方㍍、種子精選施設が8ライン、加工用穀物精選施設が1ライン、穀物受取り用のホッパーが22基、乾燥機が24基、種子の化学処理装置が2基と、拡充しており、生産能力も大豆種子が55万袋(17年度)、小麦種子が40万袋(同年度)、とそれぞれ生産している。製品の市場は、サンパウロ州、南マットグロッソ州、ゴイアス州、サンタカタリーナ州などに出荷され、パラグアイにも輸出されている。近代的な種子分析研究所もGM8(遺伝子変換)種を含む様々な分析が実施されている。04年から現在まで種子分野における国際基準ISO9001の認定を受けており、研究所も05年からISO1725に認定されている。従業員は現在、常勤が70人、農業技師12人、季節従業員を300人雇用している。

 この間、話は古いが、05年にはブラジルの代表的な経済誌「EXAME」で「宮本岩旺はブラジルのアグロビジネスで最も影響を与える10人の人物」の中に入った。09年にはブラジルの農業専門誌『A GRANJA』で『アグロビジネスの卓越した65人』の仲間入りもしている。

 このマウアー種子企業グループは同社を中心に7社から形成されている。トレス・ラゴアス農畜産社・社主、不動産&建築業のSoloplam企画・社主、企業顧問(経営コンサルタント)YN社・社主、資産売買と管理を行うYMF社主、建設&分譲を行うCONSTRUCT社・役員、ショッピングセンターの運営と企画及び管理を行うTerra Nostra社・役員、と以上の7社を率いる超多忙な経営者だ。同時に、大豆と小麦の種子業界の成長と発展に寄与し、この分野を代表する業界人としてブラジルの顔になっている。当然、国内外の多くのエグゼクティブとも幅広い交友関係がある。

 ブラジルはいま、大豆の年間生産量が米国と並ぶ1億トンを超え、輸出では世界一の規模を誇る大豆王国になった。日本の国土面積の約5倍大きい荒地だったセラード地帯が、土壌改良されて農地化が進むごとに、大豆生産量は飛躍的に伸びてきた。その縁の下の力持ちとして、高品質の大豆種子を農家や生産者に提供し続け、支え続けてきたのが、ブラジル大豆種子業界の頂点に立っている宮本なのだ。因みに同州の大豆生産高はマットグロッソ州に次いでブラジル第2位で、特にha当たりの単収は3・14トンと全27州の中で第1位の生産効率が長年続いている。ここでも本業を通して「世のため人のために尽くす」宮本の人生哲学が輝きを増している。(敬称略 文責 カンノエージェンシー代表 菅野英明)

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