ブラジルの未来を切り開く日系人経営者(87) 岩田 健一 ㊦

ブラジルの未来を切り開く日系人経営者

先手必勝の養鶏業、独自の創意工夫で業容拡大
親子3代でレシーフェの日系社会を支え続ける

岩田 健一 Ovos Tamago社 社長

 ここで夫人の和子が名付け親となったOvos Tamago社の概要と現状を見てみよう。まずブラジルの不況が始まった14年以降いまも養鶏業商売はなぜ景気がいいのか、理由を聞くと、「卵は安くて栄養があり景気が悪いと売れる傾向がある。卵は簡単に料理ができる、健康志向の時代の流れ、また日本人は年間300個食べるがブラジル人は半分以下の140個で消費はまだまだ伸びていくと予想される」という。

 
 Ovos Tamago社の養鶏場は、レシーフェから北へ60km離れたFiatの工場もあるゴイアナ市にある。まず生産面の養鶏と飼育規模だが、第1農場は長男所有で100ha、鶏舎35棟。第2農場は次男所有で80ha、鶏舎6棟(1棟10万羽)。第3農場は長女、10haでうずら40万羽。開業年月は79年。従業員は300名。卵の統一ブランド名はJumbo(皆でつけた名前)。社長は岩田健一。経営理念は『社業を通して社会のため人のために貢献すること』。主な業務内容は養鶏、ウズラ養鶏。鶏糞の肥料販売。液体卵の生産販売と製造業者への販売。不動産開発はPE州ゴイアナ市のゴイアナビーチで大型宅地分譲地45haを14年から650区画を販売し70%が販売済。以上の4事業で岩田企業グループを形成している。

 
 鶏卵の販売商圏はノルデスチ全域で9州(日本の約10倍ある面積が商圏範囲)に及ぶ。1番遠い販売先は1800キロ離れたバイア州の南部。販売方法は大・中・小スーパーに直接販売している。またウズラ卵の販売先は、ウォルマート、カルフール、エストラなど巨大スーパーや、地元の大手スーパー4社を中心に大中小各スーパーに直販している。そのために自社保有の鶏卵とウズラ卵専用の配送車が全部で25台、12トン車が10台、6トン車が15台で連日フル稼働している。

 
 Ovos Tamago社の強さの秘訣は「まず高品質でかつ長持ちする卵生産を目指している、有機卵としての市場評価が高い、品質管理が優れている、常に時代を読み切って先手必勝で行く経営方針、ウズラ市場に見られるように常に新しい市場を創っている、ビニール会社に頼んで卵が呼吸できるようにビニールに小さい穴をあけて、変色を阻止し腐らずに新鮮さを保つビニールカバーなど、常に新技術を開発している」と輝きのある顔と張りのある声で答える岩田。最高レベルの品質管理を常に求め続けながら、経営方針と経営戦略が明確になっていることだ。

 
 さらに、会社が約40年間勝ち残ってきた理由については「自社で生産かつ販売している、皆と同じことをやらず、先手必勝で人と違う独自の手法と発想で、新事業や新企画を創意工夫している。高品質の有機卵と品質管理及び配達の速さ」の3点を挙げた。

 
 経営の現場は数年前から3代目の息子2人が行っているが、創業者の岩田時代と経営で大きな違いは「2人とも大学を出てから養鶏の仕事を始めた。鶏舎の自動化やIT化など時代変化に対応した効率性や経営の合理化に努めている。家族主義経営から組織経営型の会社に移行していこうという、時代変化に即した経営の変化も見られる」という。岩田は「厳しく育てた、まじめに勉強しなさい、自由を与えているから自分の道は自分で切り開いていく、という実践自立の教育に力を注いできた」という。いまの日本が見習いたい子育て教育である。

 つぎに岩田の家族を紹介しよう。岩田は51年生まれ。生活信条は『努力』。自分の性格は「いつも働き過ぎだが趣味は仕事」というが、その趣味も「仕事と旅行」だ。妻に感謝の気持ちを込めて贈る言葉は「文句も言わず日本に帰りたいとも一切もいわず結婚してくれてありがとう」だった。子供の名前と年齢及び仕事の肩書は、長男が岩田健一ジュニア、35歳で販売全般を担当。次男が潤二、34歳で生産全般を担当。3男が雄樹、29歳で外科医。長女がなぎさ、32歳で経理全般を担当。孫は1人で優美(ゆみ)。

 
 父・国一は22年生まれで長野県富士見町出身、14年に92歳で逝去した。母・妙子は26年生まれ、東京都出身。岩田は6人兄弟の長男で3番目として生まれた。生真面目で指導力があった父は、リオ・ボニート日本人移住地で60年代前半の初代日本人会会長、レシーフェでも80年代前半に初代日本人会長を務め、旭日単光章を叙勲されている。              母も亡くなるまで一生懸命働いた。父の「一生懸命働いて勉強しなさい」のおかげで「何をやってもできるという自信を持つことができた」という。

 
 岩田は00年から06年までレシーフェ日本文化協会会長職を務めた。いま長男の健一ジュニアが役員(3世代にわたる文協役員は日系人の歴史では初めてかもしれない)を務めており、イベント実行・担当理事として活躍している。いま注目の3代目の理事である。ブラジル岩田家は世代交代の継承が理想的に展開している。

 岩田は取材の最後にこう語った。「国内出張や海外旅行に行き、ここに帰ってくるとほっとする。ブラジル岩田家にとってレシーフェは本当の故郷になっている」。仕事と生活及び文協活動で親子3代が日本文化を背負ってレシーフェの発展に貢献している。この家族には輝きがあった。(敬称略 文責 カンノエージェンシー代表 菅野英明)

2018年4月18日付

コメント0

コメントを書く

Login

Welcome! Login in to your account

Remember me Lost your password?

Lost Password