【移民106周年】ブラジルサッカー界で奮闘する「現役」プロの日本人2人 アバイーFC東城利哉氏

東城氏はまずはアバイーFCでのスタメン確保を目指す

伯国でプレーする現役選手

 サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会が開幕し、10日がたった。W杯に先駆け日本でもブラジルの文化や社会、そしてサッカーも集中的に注目を浴びた。その中で、ブラジルのプロリーグにいる2人の現役に焦点を当てる。(夏目祐介記者)

ブラジル(伯国)南部のサンタ・カタリーナ州フロリアーノポリス。ここにブラジルでプレーする「海外組」がいる。アバイーFCのFW東城利哉選手(21、東京)。

 チームに合流してまだ1カ月ほどだが練習中もチームに溶け込み、記者が話しかけると「彼は欧州でプレーしていて、頭のいい選手ですよ」とチームメートを紹介するなど、コミュニケーション能力が高い選手というのが第一印象だ。

 今年4月、同クラブと2年契約を結んだ東城氏。現在はビザの関係で試合に出る権利がないが、1カ月後をめどに正式に労働許可が下りる予定だという。

 東城氏が初めて伯国へ来たのは中学2年時の夏休み。本紙連載企画でも紹介したパラナ州のPSTC(パラナ・サッカー・テクニカル・センター)へ短期でサッカー留学をした。同クラブには翌年の夏にも訪れ、伯国での選手生活に強くあこがれた。「本当は中卒で渡伯したかったですけど、高校は出ようと思いました」。

 高校時は川崎フロンターレのユースでプレー。卒業後Jリーグ行きは考えず、真っ先に伯国のクラブを探した。「ここで日本に残ったら負けとすら思っていました」。 伯国ではまず、サンパウロ州4部リーグのパウリーニャに所属。U―20(20歳以下)でプレーし、その後19歳でリオ州1部、全国選手権4部のフィルブルゲンセACと2年間のプロ契約を結んだ。

(写真上=途中照れながら話す場面も)

 同クラブでは、2012年の8月のデビュー戦で自ら獲得したPKを決め、いきなりプロ初得点を記録。幸先の良いスタートを切ったが、けがにも泣かされ在籍中は10試合に出場。その中で5ゴールを挙げるも、レギュラー獲得には至らなかった。

 フィルブルゲンセとの契約を満了し、今年移籍したアバイーFCは全国選手権2部のクラブ。サッカーをする環境は飛躍的に向上した。「ドクター、フィジカルやメンタルのトレーナーなどスタッフが充実し、グラウンドも試合用と練習用両方ある」。

 しかし同時に周囲の選手のレベルも上がり、激しいポジション争いがある。「みな生活とプライドがかかっていますから。最初は『このジャポネース(日本人)は何しに来たんだ』と思ったでしょうね」。

(写真右=アバイーFCの栄光の歴史)

  東城氏が得意とするのはスピードを生かしたドリブル。「1対1の局面では抜く自信があります。体は小さいけれど、当たり負けもしないです」と力強く語る。 「日本人は全員でパスをつなぐサッカー。技術はあるけれど、1対1になったら勝てなくなる。僕は1人でも打開できる選手になりたいです」。

 サッカーの技術だけではない。同氏には若くから外国で揉まれた選手ならではの、気持ちの強さがある。

  「ブラジル人の中には僕をばかにする選手もいます。日本人だからって。その時はけんかしますよ。『日本は伯国よりよっぽど優れている、ばかにされる理由は ない』と。そして絶対にプレーで認めさせてやるって思っています」 東城氏は、日本を出たからこそ、日本の礼儀正しさやサービス精神の大切さに気付いたと いう。

 「例えば空港で搭乗する時に、キャビンアテンダントが『いってらっしゃいませ』と頭を下げてくれる。伯国ではパスポートを雑に扱われたりぶっきらぼうだったり。日本の礼儀作法やサービスは、特別な長所なんだと知りました」。

 また東城氏は伯国の厳しい社会環境の中で、人間的に成長したと感じている。

 「日本と真逆の環境なんですよ。日本では車やテレビ、iphone(アイフォン)も簡単に買える。でもブラジルには物が無い。だから誰よりも努力して手に入れる。日本にいたら『勘違い野郎』になっていましたよ。実力もなく何でも思いのままになると」。

 そんな東城氏に同僚も一目を置く。レビソン・サントス選手(26、パラナ)は、同氏をこう評した。「トシ(東城選手の愛称)はカリスマ性があって、みんな彼を大好きだよ。選手としてはスピードとテクニックがある。将来日本代表に選ばれても不思議じゃないよ」。

 この言葉を伝えると、照れくさそうに笑った東城氏。話題を今後の目標に移すと、表情を引き締めた。

 「まずはアバイーFCで試合に出ること。監督やコーチ、サポーターに認めてもらいたい。試合に出れば得点する自信があります」。

 現在、ブラジルでW杯が開催中。日本代表が注目される中、ひたむきに努力し上を目指す東城氏。4年後のロシア大会が、同氏が脚光を浴びる場であっても不思議ではない。

2014年6月21日付

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