モザイク 2017年5月13日付

 日々、民謡の練習に励む安永幸柄さんだが、指導者とのやりとりではよくスマートフォンを使うそうだ。といってもそれは少し変わっていて、ワッツアップというメッセージや無料通話を行うアプリのボイス機能で、演奏や歌声を先生方に送る。すると、先生方から「ここはこうだ」というような演奏が録音されて帰ってくるのだそうだ。ちなみに、「道南口説き節」というのは塩野会長いわく、瞽女(ごぜ)という盲人芸能民が函館から松前あたりで土地のことを褒め歌い、口説く(投げ銭をせびる)歌とのこと。七七七五の節で歌われるのが通常で、作者不詳、様々なバリエーションがあるそうだ。まさか、瞽女はこんな風にスマートフォン越しに歌い継がれているとは想像しなかっただろう。
     


 恥ずかしながら記者は、安永さんの歌声を聞きながら、口説きとは女が男を口説き落とす方の意味かと勘違いしていた。それは単に記者がスケベなわけではなく、そういう音楽が世界には数多くあるからだ。台湾原住民の高砂族(高山族)の一種のパイワン族の民謡には、女性が優しいメロディーを歌いあげる求愛歌があり、民俗音楽学者の小泉文夫氏が現地で録音している。台湾だけでなく沖縄、奄美でもこうした民謡があるそうだ。
     


 周知の通り、愛は音楽と切っては切れず、日本や西洋の多くのジャンルの音楽やブラジルのMPBなどでもそれぞれの仕方で愛を歌う。イスラム教圏、エジプトの古典音楽でも愛は頻繁に主題になり、記者はウム・カルスームのエンタ・オムリ(あなたは私のいのち)のレコードをカイロでたまたま見つけてから、彼女の歌声の独特な色気、楽団の演奏の叙情性に魅了され、愛聴している。日本民謡など古臭いと感じる若者も、こうした民俗音楽の切り口で日本民謡を聴いてみるのも一つではないだろうか。もちろん、世界中の愛の表現は、スケベなら一層楽しめるはずだ。

2017年5月13日付

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