モザイク 2018年11月1日付

 日伯中央協会が主催した武蔵大学社会学部のアンジェロ・イシ教授による講演会が9月、日本で行われたという。今年を「デカセギ30周年」と見立て、移民110周年と合わせて再考する内容だったそうだ。かなり強引な見立てだが、移民100周年時に「デカセギ20周年」と称したのを機に、今年が30周年になるというのだから、そういうものなのだろう。講演では、どこの飛行機で来日した誰が最初か不明とあり、出稼ぎが始まった時期自体が曖昧なのは確か。日系社会でも斡旋業者をしていた人物らが揃って「デカセギは俺が始めた」と言っている始末。4世ビザ問題が注目を集める中、希望者が少ないのも事実だが、日本でも話題に上げてもらえば有難い。


 トロント映画祭で拍手喝采を浴びた『Complicity(日本語訳:共犯)』。長編映画初挑戦の近浦啓監督が、中国人技能実習生の実態を描いた作品だ。外国人労働者の失踪はベトナム人が多い印象だが、2015年までは中国人が最も多かった。経済大国に住む中国人が日本で働く理由は、戸籍で職差別があるからだという。外国での労働が貧しさから脱却する方法だが、その状況を中間業者や雇用者に利用される。過酷な労働環境から逃げた先に何が待ち受けているのか。同作は、同映画祭において英語圏の作品ではないにも関わらずチケットが完売した。監督も予想外だったようだが、全世界共通で抱える「移民問題」への関心の高さがうかがえる。


 ブラジルでは、「どちらから来たの?」とよく出身県を聞かれるが、記者は東京出身と答えた後に、必ず両親の出身県を答える。というのも、自分は父親の出身県に誇りを持っており、そのことから日本国内の移住者子弟の気がするのだ。幼い頃から、家庭では父の出身県独自の風習を受け継いできた。父親の出身地、鹿児島県のさつま揚げを日常的に食し、おやつにはかるかんを食べ、ラーメンは豚骨。焼酎は必ず芋焼酎だ。そして何より同県に着くと、「ここに自分のルーツがある」と感じる。そう思うと、日系2世、3世が県人会の活動に意欲的なことはやはり意義があるように思う。自分が何気なく日常でやっていることは、祖先から受け継いだものかもしれない。それを知ることで、自分への理解が深まり、人生に彩りを与えるように思う。

2018年11月1日付

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