与党圧勝ムードで厭戦

大統領選、盛り上がりいまひとつ 時事通信社サンパウロ支局・鈴木克彦

 経済成長著しい新興国の雄として、国際的な影響力を急速に増しているブラジル。その今後の方向性を左右する次期大統領を決める選挙が10月3日に迫ってきた。だが、4年に1度の大一番は接戦になるかと思いきや、各メディアは現政権継承を掲げる与党候補が圧勝しそうなほどの優勢を連日伝えている。このため、政策論争も熱気を帯びず、盛り上がりはいまひとつだ。

 ◇既に勝敗決す? 

 今回の大統領選は、与野党2人の候補の事実上の一騎打ちとなっている。与党・労働党(PT)は、ルーラ現大統領の2期8年を重要閣僚や官房長官として常に支え、ブラジル初の女性大統領を目指すジルマ・ロウセフ氏(62)を擁立。一方の野党側は、人口が最も多いサンパウロ州の知事や厚生相を務め、2002年大統領選で惜敗したブラジル社会民主党(PSDB)の老練政治家、ジョゼ・セーラ氏(68)で政権交代を狙っている。

 選挙戦が本格的に始まる前は、セーラ氏が終始優勢を保ち、一時は30ポイント近い大差をつけていた。細身で大きな目が特徴的で、正直に言えば、外見だけでは地味な印象は否めない。ただ、政治実績は折り紙付き。豊富な経験をアピールし、PSDBの支持基盤である富裕層や財界などからは根強い支持を集めていた。 

 だが、今振り返れば、セーラ氏の優位は、ジルマ氏の知名度不足に起因していたようだ。ジルマ氏が与党の公認候補に選ばれ、支持率が今も8割近いルーラ大統領と絶えず一緒に遊説を活発化させるようになると、その勢いは一転。これまで投票態度を決めていなかった無党派層や浮動票をつかみ、支持率を一気に伸ばした。日本の外交筋も「ここまで大差がつくとは予想していなかった」と話す。
 9月14日公表の最新世論調査では、ジルマ候補に投票すると答えた人の比率は50・5%。セーラ氏は26・4%で、決選投票を待たずにジルマ氏圧勝の可能性も出ている。決選投票を経ずに第1回投票で勝利を決めれば、1998年大統領選以来となる。ルーラ現大統領すら成し得なかった快挙だ。

 ◇「ジルマ政権」の行方は? 

 では、「ジルマ大統領」で、ブラジルの今後はどうなるのか。 

 結論から言えば、2003年以降続くルーラ政権が継承され、大枠が変化することはない。ルーラ氏は労組委員長出身で、左派色が強かったため、就任前は先行きを懸念する声も多かった。だが、ふたを開けてみれば、公約通り貧困層対策に力を入れたものの、財政規律や市場経済に配慮した政策を採用し、結果的には未曾有の好景気を謳歌(おうか)することになった。 

 外交面でも、主要20か国・地域(G20)の主要メンバーとして先進国と対等な関係を求める姿勢を引き続き貫き、近隣の南米左派政権との良好な関係や、トルコと共に仲介役を務めたイラン核問題など国際的な難題にも、独自のスタンスで臨んでいくことになろう。 

 全世界の注目を集める4年後のサッカー・ワールドカップ(W杯)や6年後のリオデジャネイロ五輪で、次期ブラジル大統領は「開催国の顔」という大役を務める。かつて「鉄の女」と呼ばれ、こわもての眼鏡姿だったジルマ氏は、同国の著名メークアップアーティストの日系人セルソ・カムラ氏の手ほどきで、髪型も顔色も見違えるような「変身ぶり」が話題になった。当選が日増しに確実視される中、今後4年間でどんな姿を披露しようと思いを巡らせているのだろうか。

2010年9月18日付

コメント0

コメントを書く

Login

Welcome! Login in to your account

Remember me Lost your password?

Lost Password