伊で感じた美を刻み続ける(終) 東京、ブラジルでの活躍

伊で感じた美を刻み続ける(終) 東京、ブラジルでの活躍
アトリエに飾られている東京・高島屋での展覧会ポスター

 諸外国で展覧会を重ねていた豊田豊さん(86、山形)は1979年、日本からの招待で東京現代彫刻センターへ行き、高島屋の1フロアを貸し切り、ステンレス彫刻の大展覧会を開催した。政治家や大使など、各界から大勢の人が来たという。当時の日本に、まだステンレス彫刻は無く、各地から制作の依頼が舞い込むようになる。北海道・豊富町からは「(同町から)ブラジルへ移民で行った家族が大勢いるから、公園や町に彫刻を飾りたい」と依頼を受けたこともあったという。他にも、福岡市営地下鉄の赤坂駅など日本全国に作品40点以上が設置されている。

 ブラジルでも同様に、病院内や首都ブラジリアの空港など各地に自身の作品が設置されている。ブラジリアの空港では、6×16メートルのステンレス彫刻が盗まれる事件が発生し、再制作してほしいという話もあるそうだ。

 豊田さんは、自身の作品の特徴を「作品の表面には色を付けず、裏側に色を付ける。ステンレスや蛍光塗料などの現代の材料で、時代の作品を作っている。現代も色は増え続けており、赤外線やガンマ線など見えない色も無数にある」と現代の芸術と、57年間考え続けてきた自身の制作観念を語る。

 日系社会でも多くの役目を果たしてきた。豊田さんは文協美術委員会の委員長を3度務め、2008年には移民100周年記念展を開催した。現在は山形県人会の顧問も務めている。

 豊田さんは「芸術家というものは、ヒューマニティー(人間性)に則した作品を考えている。エコロジーなど時代のテーマを先読みし、30~40年前から見据えて作っていく。世の中を先読みし、ヒューマニティーをも作品に盛り込めるのが本物の芸術家だ」と自身の芸術家としての考えを語った。

 サンパウロにあるイギリス総領事館が入るビルなど、各国の重要拠点に作品を納めてきた豊田さんだが、在サンパウロ日本国総領事館や、文協など日系社会にまつわる場所に、世界を代表する日系彫刻家の作品がない現状もある。

 2時間以上に及んだインタビューの終わりに、豊田さんに今までで一番思い入れが残っている作品を聞くと、「天童市に飾られた銅の彫刻だね」と即答した。アルゼンチン、イタリア、ブラジルと世界を股にかけた豊田さんの心には、故郷・日本のアイデンティティー、山形県・天童市への思いが詰まっていた。(おわり)

2017年10月3日付

コメント0

コメントを書く

Login

Welcome! Login in to your account

Remember me Lost your password?

Lost Password