南伯援協の最も重要な活動 巡回診療を継続する森口一家

南伯援協の最も重要な活動 巡回診療を継続する森口一家
巡回診療を続ける森口一家(2018年8月18日撮影)

祖父の細江氏から3代にわたって

 南日伯援護協会(南伯援協、谷口浩会長)の最も重要な活動が、リオ・グランデ・ド・スル州とサンタ・カタリーナ州の各移住地で行う巡回診療だ。現在診療を行っているのは森口秀幸医師(60、東京)で、祖父の細江静男医師(故人)、父親の森口幸雄医師(92、東京)から3代にわたりブラジルで巡回診療を行っている。

 巡回診療を始めた細江氏は、外務省の嘱託医としてブラジルに派遣。日系社会の医師不足を痛感した細江氏は、サンパウロ州を中心に地域を周る巡回診療を始めた。

 細江氏の三女・カオルさんと結婚した幸雄氏は、慶應義塾大学を卒業し、博士課程をミラノ大学で終えた。細江氏の誘いを受けたこと、当時の息子が受けていた日本教育に疑問を抱いたことで、幸雄氏は45歳で家族とともにブラジルへ移住。リオ・グランデ・ド・スル連邦大学医学部より医師としての資格付与を得て、当時の同市領事館の打診により巡回診療のボランティアを始めた。

 「1世はポ語を話せない人が多いので、1年に1回の診察を皆さん待ってるんですよね」目を細める幸雄氏は、「父親は歯医者をしていて、貧しい人からはお金を取らなかった。そんな親元で育ったので、人のためだと思ったら巡回診療は苦じゃなかった」とし、89歳まで診療を続けていたという。

 幸雄氏から巡回診療を受け継いだのが、息子の秀幸氏だ。10代の頃から父親の巡回診療に同行しており、現在も毎年1回、3500kmの距離をバスで走行し、1世を中心に約400人の患者を診察している。

 検査は前もって現地で受けてもらい、それを見ながら診察を行う。処方箋は日ポ両語で書き、ポ語が分からない患者にも理解できるようにしているそうだ。中には、ガンですぐに手術が必要だった時もあったそうで、「すぐにポルト・アレグレの大学病院で手術をしてもらいました」と秀幸氏は巡回診療の重要性を語る。

 巡回診療を継続するにあたり、費用の捻出にも頭を抱えているという。「JICAの援助資金は年々少なくなっています。以前は足りずに、約1万レアルを自費で出していました」と苦悩を語る秀幸氏。資金繰りに困っていた際に日本でその話をしたところ、クラウドファンディングをやることを勧められ始めた。そのお陰で、毎年日本から150万円の資金を集めることができるようになったそうだ。

 また、診療車が古く故障が続いた際には、梅田邦夫前在ブラジル日本国大使に悩みを話した結果、梅田前大使自ら日本政府の草の根支援に話を通し、2000万円用意してもらい診療車が購入できたこともあったとし、「今でも感謝しています」と秀幸氏は微笑む。

 秀幸氏はリオ・グランデ・ド・スル連邦大学で教授を務める傍ら、巡回診療で診察した患者から毎週メールや手紙、電話で連絡が来ることに「もうライフワークになっていますね」と笑う。

 今まで他の日系人の医者が手伝ったこともあったが、金銭面や労力の問題で長くは続かなかった。しかし、医学部に進学した長女の愛子さんと理学療法士を目指している次女の貴子さんが、後を継ぐために現在一緒に巡回診療を手伝っている。「跡継ぎがいることに、日系社会の皆さんも喜んでいるようです」と秀幸氏。「父の代は予防、自分の代は治療がメインだった。これから娘の代になると、もっと重い病気を診察することが増えるはずです」としながらも、「必要とされているから、見捨てるわけにはいかない。90歳まで続けたいと思っています」と巡回診療に対する強い使命感を語った。

2018年9月15日付

コメント0

コメントを書く

Login

Welcome! Login in to your account

Remember me Lost your password?

Lost Password