変わる地球環境① 大都市部、温暖化ガスが60%も増加か?

特別寄稿 成田修吾

 年々と気候変動が著しくなってきているここ数年の気象は、何か不気味な予兆を思わせるものがある。そこで、従来の生産ベースの算定では不十分だと反論する専門科学者たちが、今年の2月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)へ新たに提出した算定報告書を紹介する。(NGニュース・2018年3月12日版)それによると、米ニューヨーク市の世界最大の農産物物流センター、ハンツポイント青果市場で箱に入れられた大量の果物や野菜など、今年に入ってから仕入れ生産物について炭素排出量をもっと正確に算定する必要が示唆された。

 世界の大都市の炭素排出量は、都市で消費する製品やサービスのすべてを算入すると、これまでの推計より60%も多くなることが最新の分析で明らかになった。

 これは、カナダのエドモントンで開催されたIPCCの「都市と気候変動に関する科学会議」で、3月6日に発表されたものである。新たな報告書では、食品、衣類、電化製品、飛行機での旅行、建設業など、都市の外で生産され、都市の住民が消費するものに関する炭素排出量が推計されている。

 これまで、世界全体の二酸化炭素排出量の70%は都市からのものとされてきた。だが、消費に関する排出量を算入すると、それ以上になるだろうと言うのは、この報告書の作成者で、気候変動対策に取り組む世界の都市ネットワーク「世界大都市気候先導グループ(C40)」のプログラム・ディレクター、マイケル・ダウスト氏である。

 「食物やエネルギーなどの製品やサービスの生産に関する排出量しか算定していないのは、コインの片面しか見ていないのと同じです」とダウスト氏はエドモントンでのインタビューで答えた。「消費に関する排出がどんなもので、どこで排出されるのかを知ることで、都市や住民は、炭素排出量を削減するより良い方法を決定できるようになるのです」――。ロンドン(英)、パリ(フランス)、ニューヨーク(米)、トロント(カナダ)、シドニー(オーストラリア)など、大規模な工業地区がなくなった裕福な「消費都市」では、地域の排出量が著しく減少した。しかし、今回の報告によると、商品やサービスの消費に伴う排出量を算入すれば、こうした都市の排出量は一気に高くなり、1人当たりの排出量は世界最高の水準となる。一方のインド、パキスタン、バングラデシュなどの「生産都市」では、ヨーロッパや北米で販売・消費される製品の製造過程で大量の炭素を排出し、公害が多発している。

 今回の報告書「C40加盟都市の消費に基づく温暖化ガス排出量」で調査したのは、C40に加盟する79都市の市民が消費する温暖化ガス排出量だ。先に述べたように、食品や衣類、電子機器、飛行機での旅行、トラックでの配送、建設業といった商品およびサービスなどを含んでいる。

 「我々は気候変動に関して、依然として間違った方向に進んでいます」とC40の事務局長マーク・ワッツ氏が言う。地球全体の炭素排出量は、京都議定書で排出量削減に関して国際的に合意した1997年以来、60%も増加している。「再生可能エネルギーや大量輸送の利用を増やすだけでは、状況を変えることはできません」とも。「消費を減らす必要があるのです」。

 「今回の新しい調査により、都市政策を立案する当局は、地球規模の気候変動に都市が与える本当の影響についてより深く理解し、気候変動対策において今まで以上に大きなリーダーシップを発揮できるようになるでしょう」。

 「排出量の削減に貢献したものを買うべきです。他の地域に排出量を押し付けるだけではいけません」と話すのは、エドモントン市長ドン・アイブソン氏だ。同氏は、都市の本当の炭素排出量を知るには、消費に基づく算定が重要だと言う。「不要なものを買わず、地産地消し、廃棄物を削減することが、消費に関する排出量を削減するのに役立ちます」。

 米オハイオ州クリーブランド市の持続可能性に関する責任者マット・グレー氏は、この新しいアプローチを歓迎するという。グレー氏によると、これまでの持続可能性の算定法では、クリーブランドのように製造業を多く抱える都市は低評価を受けていた。対して、サービス業が中心で、クリーブランドで製造したものを消費する都市は評価が高い。2017年の米国の都市の持続可能な開発目標指数では、資源の消費が考慮されておらず、クリーブランドは最低の水準だった。クリーブランドが地産地消では国内トップクラスだと広く認められているにもかかわらず、地産地消の活動は開発目標指数に反映されていないとグレー氏は言う。

 消費に関する排出量のこの新しい算定法を考慮し、フランスのパリ市は、飛行機での旅行による排出量を削減する取り組みの一環として、鉄道で行ける国への観光客を増やそうと計画している。

 また、炭素排出量が多い肉から野菜中心の食事へ変えることを、市民に奨励している。スウェーデンのストックホルムでは、すべての開発業者に対し、建設資材に関連する排出量を具体的に推計するよう求めている。単にデータを見るだけでも、排出量が少ない材料を使用するという決定につながっているとダウスト氏は言う。「古い建物の改修や、新しく建築する際の都市の決定にも役立ちます」。

 「この報告書が示しているのは、都市が消費の問題に取り組めば、地球規模の排出量をもっと削減できるのだということです」。(つづく)

2018年6月7日付

コメント0

コメントを書く

Login

Welcome! Login in to your account

Remember me Lost your password?

Lost Password