弓場農場 クリスマスの集い㊦ 恒例でも各々に特別な芸能公演

弓場農場 クリスマスの集い㊦ 恒例でも各々に特別な芸能公演
音楽の部とバレエの部のフィナーレ
弓場農場 クリスマスの集い㊦ 恒例でも各々に特別な芸能公演
芝居の部のフィナーレ

 12月25日の音楽とバレエと芝居の公演は午後7時半から、同農場敷地内のユバ劇場(テアトロ・ユバ)で行われた。

 同劇場が完成したのは、1961年12月に小原朋子さん(82、東京)が初めて弓場農場を訪れた時のこと。「炎天下で、『座ってー、立ってー』と私が(踊りの)指導をしているのを見た弓場(勇)さんが指示して、(現在の劇場の場所にあった)コーヒー畑を全部引っこ抜いて1週間で作っちゃった。その頃、子どもだった人たちもいるのよ。当時は袖幕もなく、床板しかなかった」と、小原さんは懐かしむ。

 その後、78年の改築を経て、現在の奥12メートル、幅10メートル、高さ4・5メートル、楽屋付きで、収容可能人数450人、客席拡張時で800人の立派な劇場の姿がある。これも前日から農場の男手によって、椅子運びや屋根を拡張する大工仕事などが手際よく進められていた。

 農作業にも精を出す男たちは、トラックやトラクターといった重機も巧みに操り、高い脚立を上れば、大工仕事も慣れた手つきでこなし、舞台に立てば、音楽奏者や歌い手になり、芝居では迫真の演技をこなす。男たちに限らず、農場の女性たちもそうだが、弓場農場で生活する人たちはみなこうした沢山の「顔」を持っている。こうした器用さが充実した共同体生活を成り立たせている一つの鍵でもあり、弓場農場のクリスマス公演の独特の味わいでもある。

 当日の夕方から夜にかけての豪雨の影響もあってか、昨年よりやや客足は減少したものの、公演には200人以上の来場者が劇場に集った。

 公演は、レネ・デ・フレイタス氏と弓場稔子(としこ)さんの指導、農場の人たちと近隣の子どもによる弦楽演奏で幕開け。フルートとアコーディオンの合奏や矢崎勇さんと辻義基さんのサックス演奏も会場を沸かせた。他にも4氏によるピアノ演奏、フルートとピアノの合奏などが披露され、音楽の部の最後は、総勢21人による「赤とんぼ」や「この道」、「ハレルヤ」の合唱で締めくくった。

 バレエの部では、弓場農場伝統のモダンバレエが披露された他、日本でモダン・ダンスの公演活動を行っている熊本恵美さん(35、神奈川)の特別出演もあれば、小原さんの圧巻のソロの舞、キレのある足さばきのタンゴも会場を魅了した。

 休憩を挟んで、1時間を超す長編芝居「忍者メダカ組」も披露。終始滑稽な忍者3人組が、宝探しの任務に出るドタバタ劇は、会場の大人から子どもまでを虜(とりこ)にした。

 第2アリアアンサ移住地で生まれ育ち、毎年見に来ているという細田英夫さん(72、2世)は、「こういう田舎にいて、毎年無料で見れるのはすごく良いこと。(芝居や歌の日本語含め)日本の文化を続けてくれるのもすごく良いことだと思う」と微笑んだ。

 隔年で演出を担当し、今年で20年目、10回目となり、脚本から全てを手がけた熊本由美子さんは、大盛況となった公演終了後、「毎年(弓場農場の)クリスマス(公演)を楽しみにしてくれる人もいて、張り合いがあります。新しく(農場に)入った人もどんどんやって、みんなが楽しく何かに向かってやれるのが良い」と興奮をにじませながら語った。

 滞在3年目にして、今回初の舞台となった、矢崎信勝さん(70、東京)は、「とっても幸せでした。一つのものをみんなで作り上げたような感覚はやっぱり舞台でしか感じられない。(スタッフにも観客にも)感謝です」と語り、同農場との絆を一層強めた様子だった。

 こうして、様々な形で農場に縁を持った人々が共にしたクリスマスの時間は、毎年恒例と言えども、それぞれにとって特別の味わいを持ち、少しゆっくりと過ぎていくようだった。(おわり、河鰭万里記者)

2018年1月10日付

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