【2011年新春特集】文化の伝導師・高橋ジョー氏

――ジョーさんは、昨年、国際交流基金サンパウロ文化センターから独立し、「道」(どう)というプロダクションを開設されました。まず、その話からお聞かせ下さい。

高橋 プロダクション「道」(どう)は武道を表しますが、それ以外に交差(クロス)する道という意味があります。クロスするところに新しい文化(道)ができる。この観点から命名しました。ひそかな思いとして、オヤジが北海道出身で、オヤジの道を受け継いでいくという意味もあるんです。オヤジが何をするためにブラジルに移住してきたのかを考える機会にしたい。基金の正職員になり25年。一つの分岐点でもあり、独立する必要もあるかなと思ったんです。基金では、文化事業の企画、実施を行ってきました。ここで学んできたことを生かして新しい企画を開発できるのではないかと考えました。これからは、基金でできなかったこと、本格的な文化紹介を行いたいと考えている。日本の伝統文化は一通り紹介できました。しかし、ブラジルから日本に何を発信してきたか。そういう意味での交流が足りない。ブラジル人として日本に向けてブラジル文化を発信していきたい。

――文化事業を展開するには資金が必要ですが。

高橋
 一つの挑戦、課題です。だが、機関、企業に分散し、賛同してもらえば可能です。小規模の事業をこなすことによって実現できます。

――ブラジル移民100周年記念事業で、「日本文化週間」を成功に導いたのはジョーさんでした。あの事業で学んだことを教えてください。

高橋
 「日本文化週間」は、2008年6月10日から23日まで300件以上のイベントをアニャンビーのコンベンションホールで行った。この総責任者でしたが、総額850万レアルの経費を集めるのに腐心しました。文化省のルアネイ法を利用して免税枠をもらい、企業から法人税の代わりに文化事業資金を提供してもらった。時間はかかったが、一般の寄付も募り、同年末には満額を集めました。文化事業を展開するときには、ルアネイ法だけではありません。このことを企業の皆さんが良く知らない。いくつかの免税プログラムがある。州単位では、文化事業には、プロアッキと呼ばれる流通税が免除されるものがある。メーカーなどが製品を港などに運ぶときにかかる税金。例えば、コジッパ、ウジミナスのような企業も対象になる。これは、ルアネイ法と肩を並べるほど大きな金額になる。また、市単位でもある。サンパウロ市の場合IPTU(家屋税)を免税にするものがあり、スーパーマーケットのような大きな面積を占有している建物を所有している企業が対象です。また、5万、6万レアルという比較的少ない費用の出版物には、この制度が有効です。こうした出版物などの場合、企業の名前が記載されるので宣伝効果が期待できます。これらを日本企業に理解してほしい。日本週間では、協賛していただいたのはブラジル企業がほとんどで、日本企業から協力してもらえなかった。

――文化イベントで日本企業の支援を得るのは難しい。「日本文化週間」で支援した企業としてのメリットはあったのでしょうか。

高橋 日本週間に関して言えば、新聞記事はブラジル全国で5千件ほど掲載されました。TVは約450件。ブラジル最大のTVグローボは朝、昼、夜のニュース番組であわせて70件。1回平均4分間で70件なので280分、宣伝効果は計り知れないものがありました。こうしたマスコミの報道のおかげで資金協力していただいた企業に対しお礼ができたと思っています。日本企業はその機会を見逃した事になり、反省すべきではないかと思います。

「日本は文化後進国」
――移民100周年は、企業だけでなく、日本政府の協力もほとんどなかったわけですが。

高橋 確かにそうです。企業だけでなく、日本自体が文化的に後進国。現状を見ると、経済状況が悪化すると文化的な費用が一番最初に削減される。文化は目立つものではない。すぐに還元されるものではないので製品と同じように考えるのは間違いです。企業も同じ。経済効果だけを考え、景気だけを重視するという軽い姿勢で海外で仕事をしているように感じます。ドイツの場合、ゲーテ・インスティチュートのように文化に対して支援体制が整っています。日本にはその真剣な意気込みがない。日本には素晴らしい文化があるのに、広く海外に普及・振興しようとしない。日本の国際交流基金も同じ傾向にある。海外の拠点を閉鎖していくという浅はかな視点で仕事をしていると言わざるを得ない。日本人には、文化がなくても生活していけるという姿勢が根底にあるのではないかと疑いたくなりますね。

――それでは、日系コロニアはどうでしょう。

高橋 同じですね。日系コロニアも文化的レベルの底上げを真剣に考えないといけない。基金の仕事をしていて感じたことがあります。日系コロニアの一部の人たちから、国際交流基金や私が日系コロニアに背を向けているのではないかという批判を受けたが、これは誤解だ。日系コロニアの皆さんに見つめてほしいのは、ブラジル社会が真剣に日本文化と向き合おうとしているのに、日系人は本当に日本文化と向き合っているのだろうかと疑問を持ちます。

――おっしゃる通り。日系コロニアの日本文化に対する姿勢は、主催団体が資金集めのための手段でしかないと私も思います。中途
半端なものでお茶を濁しているという感じが強く、日本文化をブラジル社会に普及する気持ちではないような気がします。

高橋 その通り。どのイベントも同じで、鮮やかで大衆的なものに人気がある。和太鼓、よさこいソーランに絞られていて、手っ取り早いもの、すぐに展示できる安上がりの1回限りの事業。継続して、何をやるべきなのかの視点が欠けています。日系コロニアは外部から見ると組織化されているように見えますが、そうではない。組織化するなら全伯規模で1月にその年のすべてのテーマを統一する必要がある。真剣に企画性を磨かないとだめですね。

「文化は未来を構築する」
――日系各団体は日本からの進出企業の協力を得ようと各団体がお願いに行きますが、なかなか実らない。これは、先ほどジョーさ
んがおっしゃった企業の文化に対する姿勢だけなのでしょうか。

高橋 根本的なところでギャップがあると思います。日本企業を相手にするには日本語が必要。日系コロニアは日本語離れが進み、カタコトの日本語でごまかそうとしている。重要なポイントが企業の人たちに伝わっていない。言葉が不十分でいい企画でもうまく伝わっていないような気がします。こうした初歩的なところで躓いているように思う。

――文化に対する考えを聞かせてください。

高橋 文化事業を企画し、実施するということは趣味的活動と見られがちですが、そうではありません。文化は社会の幸せの基盤、違う文化を理解する手がかりになるのです。理解することによって個人が社会的な存在を再確認するきっかけがつかめます。企業の人にも理解してもらいたい。文化=幸せ、何に繋がるか。未来構築、未来をデザインすることです。「道」ではそれをやろうとしている。期待すべき未来をデザインする。文化の深みというのは「イベントは楽しかった」と過去形になるのはいけないのです。

――最後になりますが、日系コロニアに対してどのように感じておられるのでしょうか。

高橋 日系団体には、今説明したようが取り組みがありません。ぬるま湯の文化―お祭り―だけでは恥ずかしいですよね。日系2、3世に日本文化と真剣に取り組んでほしいと考えています。(文責編集部)

2011年1月1日付

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