新来記者日記
初出勤から1週間以上が経ち、サンパウロ市リベルダーデ区を歩いていても道に迷わなくなってきた。
バロン・デ・イグアペ街を行くと、痩せこけた老人が白猫を頭の上に乗せて、平然と歩いているのとすれ違う。猫の方が対照的に、狭い頭の上で足の置き場に困り、耳を逆立てている。
レストランでは、若者が口の周りに100個くらいのピアスを刺しながらハンバーガーを食べているのが見える。まるで、膨れたフグを丸かじりしているようだ。
もう少し歩いて、トマス・ゴンザガ街に行くと、ラーメン屋の行列から日本語が聞こえ、リベルダーデ駅前のスーパーの前を通ると買い物客から中国語が聞こえてくる。
その近くの「すき家」は家族連れで賑わい、その少し先の銀行では「あなたのためのイタウ」という文字が見える。日曜日に駅前広場に出てくる屋台で特大の餃子を買うと、薬味としてネギと酢醤油の他にアボガドとジャガイモ、玉ねぎが置いてある。夕方の三重県橋ではカップルの熱い抱擁と接吻(せっぷん)の光景が広がり、その横を目が充血した男がズタ袋と聖書を手に、ブツブツと何かを読み上げながら歩いていく。
隣の大阪橋の上から幹線道路の方を見下ろすと、遠くのビル群が夕陽に燃え、中国拳法の看板に映る道着を来た白人男性がなんだか勇ましく見えなくもない。
本紙があるミツト・ミズモト街に戻ってくると、向こうからバイリファンキの激しいリズムが聞こえてくる。道には迷わなくなったが、ここが一体地球上のどこなんだか、時々分からなくなる。
2017年4月25日付
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