【2018年新春特集】日本酒に懸ける熱い思い

日本酒に懸ける熱い思い
「酒蔵Adega de Sake」の店内に並ぶ日本各地の日本酒

人と自然との組み合わせを重視 
「酒蔵Adega de Sake」代表の飯田さん

日本酒に懸ける熱い思い
2016年10月に実施した酒蔵周遊ツアーで群馬県の永井酒造を訪れた一行

 新年を迎えるに当たって、元旦(1月1日)に日本人として欠かせないのはお節料理と日本酒(お屠蘇(とそ))だが、ここブラジルの風習では元旦よりもクリスマス(12月25日)に家族で過ごすことの方が重視されているようだ。当初、「新年と日本酒」をテーマにした記事を書く予定だったが、取材対象者である日本酒・焼酎の小売専門店「酒蔵Adega de Sake」代表の飯田龍也アレシャンドレさん(42、2世)に話を聞いているうちに、日本酒への熱い思いを持つ飯田さんの活動にスポットを当てたくなった。現在、日本をはじめ世界各国に75人いる「酒サムライ」の中で、ラテン・アメリカ地域では唯一の存在である飯田さんに話を聞いた。

 「以前は、酒は飲めなかった」と語る飯田さんが、日本酒に関する仕事を始めたのは2004年のこと。当時はサンパウロ(聖)市リベルダーデ区の目抜き通りであるガルボン・ブエノ街に日本酒販売店を開店し、現在のモエマ区に「酒蔵Adega de Sake」の店舗を移して4年目になる。

 ブラジルでは元旦にお節料理を食べたり、日本酒をお屠蘇として飲む習慣が一般的でないため、伯国での日本酒販売についてはあえて時期を作らないというが、家族と過ごすクリスマス時期にはプレゼント及びパーティー用として、「吟醸」「大吟醸」などの高価な日本酒が出るそうだ。 

日本酒に懸ける熱い思い
サンパウロ市内で行われた日本酒イベントの様子

◆百聞は一杯にしかず

 飯田さんのモットーは「百聞は一杯にしかず」―。客に対して、最もその人の口に合う日本酒を提供することを信条としており、「お客様一人一人のコンサルタントとして、より美味しく楽しく飲んでいただきたい」との思いを込める。

 そのこだわりは徹底しており、ブラジル国内では場合によっては客と言い争いになることもあり、日本の蔵元からも「厳しいですね」と言われつつ、「そんなにまでして売ってもらってありがたい」と感謝されることも。

 以前、リベルダーデ区のガルボン・ブエノ街の店舗で販売していた際、非日系人の常連客から1本500レアル以上もする大吟醸を買いたいと言われた時、「これは果物の香りがきつく、甘いよ」と言って断った。「あんた、商売が下手だね。それじゃ、何がいいんだ」と客に聞かれた飯田さんが「これ、飲んでみな」と勧めたのが、その客の口に合う大吟醸で、半値の日本酒だった。結局、試飲したその常連客は「これ、気に入った」と、その日本酒を3本も購入して意気揚々と帰って行ったそうだ。

 飯田さんは「ブラジルの良いところは、ありのままに話せるところ。初対面のお客様でも5分で打ち解けられる。日本ではできないブラジル流の『おもてなし』ですよ」と言って笑った。

 一方、次のようなケースもあった。

 昨年の12月23日のこと。ある日系の老婦人が「山口県のお酒を探している」と言って来店した。聞けば、山口県から子供移民としてブラジルに移り住んで、まだ1回も日本に一時帰国したことがない主人と、その年のクリスマスを祝いたいという。飯田さんは「やまぐち伝説」という純米酒を勧めた。それから4日経った同27日にその老婦人が再び来店したので、飯田さんが「(日本酒は)どうでしたか?」と尋ねると、彼女から「主人は大変喜んでいました。ついては主人の葬式に使うため、もう1本同じ日本酒を買いたい」と言われた。愕然(がくぜん)とした飯田さんだが、「私からの香典です」と2本目の代金は受け取らなかったという。

 「その方は、最期に自分の故郷の日本酒を飲んで逝かれたんでしょうね。ドラマのような話を実感できるのが、日本酒の力ですね」と飯田さん。「日本酒1本1本に、人間の個性が入っている」ことを日々、実感している。

◆酒蔵周遊ツアーを実施
 利き酒など、日本酒に関する各種イベントを実行している飯田さんは2017年10月、北は岩手県、南は広島県まで13カ所の酒蔵を周る16日間の特別訪日ツアーを旅行会社と企画して実施。医者、企業の株主、レストランのシェフ、ワインのソムリエなど非日系人を中心に9人のブラジル人が参加した。

 参加者によって興味の違いがあるため、例えば観光地の訪問時間を巡っては意見の不一致もあるなど今後の課題もあるそうだが、奏効したのは聖市の日本食レストランで開いた参加者への事前研修会だった。酒作りをはじめ、酒蔵内及び冷蔵室等での動きをレクチャー。また、日本食の食べ方、日本酒の注ぎ方、受け方、飲み方など礼儀作法を講習した。そうしたことで、今回のツアーで京都の有名懐石料理店「吉兆」に行った際は、同店関係者から「多くの外国人が来店されますが、今回は本当に気分良く仕事ができました」と称賛されたという。

 また、今回の特別ツアーで飯田さんは、商談も実施。その中でも、今回で2回目の訪問となった群馬県利根郡川場村にある(株)永井酒造(永井則吉社長)は、特に思い入れのある酒蔵の一つだ。「(1887年創業の)永井酒造さんは、1代目から水源を守るために山を買って酒蔵を造り、(6代目蔵元の)永井社長は町づくりのためにあえて、一人一人の個性を生かした酒造りを行っている人です」と、その徹底した考え方に惚れ込む。

 「永井酒造さんで日本酒を試飲させてもらった時、思わず『うまいなあ』と唸りました。本当に旨い酒というのは言葉が出ないものですが、それを見た永井さんが『私は飯田さんと仕事がしたい』と言ってくれた時は本当に嬉しかったですね。この仕事を選んで正解だと思いました」と飯田さんは、日本酒を通じた人と自然とのペアリング(組み合わせ)を常に重視している。

 18年10月には同様の酒蔵訪問ツアーとは別に、芸術家グループのツアーや、19年2月には北海道の酒類・食べ物に関連するツアーも既に企画しているという。

 飯田さんは、「私は自分で日本酒を造っているわけではなく、蔵元さんや蔵人さんに申し訳ないという思いが常にあります。各地で日本酒を造っている酒蔵さんの話を聞き、自分で感じたものを吸収して、各酒蔵の従業員となってどの酒も公平に売ることが大切だと思っています」と「酒サムライ」としてのこだわりを強調した。

 酒蔵周遊ツアーの様子は「Circuito do Sake」(https://www.circuitodosake.com/)を参照のこと。

 問い合わせは、「酒蔵Adega de Sake」(電話11・4304・0025)まで。ホームページ(https://www.adegadesake.com.br/)

2018年1月1日付け

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