次世代に継ぐ日本人移民、日系人の足跡㉕

県連創立40周年式典で歴代会長として功労者表彰を受けた網野さん(左)(2006年)

日伯、コロニアをつなぐ 県連会長として奔走 網野弥太郎さん

 本業の商売の傍ら、日系団体の活動にも力を注いできた網野弥太郎さん。その舞台となったのが、ブラジル日本都道府県人会連合会(県連)だ。1990年から2000年までの山梨県人会長在任中、94年から6年間連合会長として辣腕(らつわん)を振るった。

海外在住の日本人が日本の国政選挙に参加する在外選挙権の要望は、30年前の82年、藤井卓治県連会長の時代に提唱されたもの。その運動は中西忠勇会長時代に再び盛り上がり、網野さんが95年の海外日系人大会で伯国内の署名を提出。運動はその後、米国ロスから欧州、アジア、豪州など世界各地の邦人による「海外有権者ネットワーク」へと発展した。「アメリカでは反対する人もあったようだが、ブラジルでは反対する人はなかった。皆日本の政治に意見を反映したいという思いだった」と網野さんは振り返る。

運動は被選挙権、いわゆる「海外選挙区」まで見据えたものだったという。「世界5地区の代表者が日本の国政の力になれると思った」と網野さん。その夢の実現には至っていないが、運動は98年に参院比例区への投票実現という形で結実、現在は衆議院の選挙区投票まで拡大している。

しかし、選挙人登録、投票率は低調なまま。伯国の地理的な大きさ、郵便投票手続きの煩雑さなどもあるが、網野さんはこれに「時間」を加える。「在外選挙が認められた時にはもう1世が少なくなって、関心が高まらなかった。(30年前の)藤井会長の時代だったらもっと違う形になったかもしれない。ちょっと時が遅かった」

山梨県人会会長の高野芳久氏が県連会長を務めた80年代半ばには「県連センター構想」が持ち上がったこともあった。リベルダーデに県人会事務所が入居するセンターを取得する計画で、母県選出の金丸信元副総理の協力を得るため、当時副会長の網野さんも訪日。土地の購入までこぎつけたが資金が足りず、最後は手放すことになった幻の構想だ。

95年の日伯修好100周年では企画委員長、98年の移民90周年では副委員長を務め、それぞれの祭典成功に力を注いだ。90周年のサントス日本移民上陸記念碑建立に当たっては同地日本人会に協力し、1ドル募金運動を展開して完成。現在まで続く県連主催の日本祭り(フェスティバル・ド・ジャポン)も移民90周年を記念した「郷土食・郷土芸能フェスティバル」として始まったものだ。99年には他の日系団体とともに神戸の旧移住センター保存運動の陳情も行っている。

県連会長として開催を推し進めた同フェスティバル。当時、各県人会単位でしか知られていなかった郷土食や芸能を一カ所に集めて紹介することを目的に発案されたという。しかし当初の各会の反応は、「あまり賛成がなくて。無意味、とか、誰に見せるのか、とかいう声もあった」そうだ。

網野さんが会長として仕切った2回はイビラプエラ公園で開催された。最初は22県人会が参加し、7万人が訪れたという。「珍しがられたね」。現在のように 十分なスポンサーもなく、初めてのことで役所の理解も少ない。収支はようやくトントンだった。「回を重ねるごとに協力者や動員数が増えていった」

今では世界有数の日本文化紹介イベントに成長し、14回目の昨年は約18万人が来場した。「こんなになるとはね」、その一歩を踏み出した網野さんは感慨深げに話し、「当分続くでしょう。主催者も新しいことを考えないと」とエールを送る。

現在は顧問となったが、今も県連、県人会へ寄せる思いは強い。「会が仲良しクラブ的になるのも悪くないけど、普遍的な、共通したものがないと別れるのも早 いんじゃないかな」と網野さん。また、「将来は続けられなくなる所も出てくるかもしれないが、47県人会がなるべく欠けないよう弱い所を支えるのが県連の 義務だと思う」と話す。

「日本とのパイプを密にして交流し、人を育てるのが県連、県人会の務め」と力を込める。「自分が会長になったころは1世 が終われば会も終わりと言われたけど、今も優秀な2世の人たちが立候補している。将来はあると思いますよ」。そして、「研修や留学で自分たちが育ったよう に、後輩を育ててほしいね」と付け加える。

「リベルダーデで商売をやってきたから、こうやって日系団体とのかかわりもできたのかもしれないね」 という網野さん。携わってきた事業の多くが「日本とのつながり」という言葉と結び付いている。その視線は、東日本大震災からの復興を目指す現在の日本にも 向けられる。「移民100周年が過ぎたけど、移住という言葉を終わらせてはいけない。ボーダレスの今はどこに住んでも日本人。外国からの力で日本を支える ことができると思うんですよ」
(2012年1月16日サンパウロ市で取材)(松田正生記者)

2012年9月7日付

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