特別寄稿 在サンパウロの県人会について考えたこと③ 日本ブラジル中央協会常務理事・桜井 悌司

◆6 ではどうすれば、 県人会の活性化をはかることができるか?

 数年のサンパウロ駐在のみで、かつアウトサイダーである私がこのようなテーマに口をはさむことは、極めておこがましいことであるが、短期的、中期的、長期的ないくつかの提案をしたい。

◆「県人会のあり方のビジョンをつくること」

 現在、県人会はそれぞれの考え方にしたがって、予算、マンパワー等を考慮しながら、活動している。一度、ここで原点に戻り、県連が中心となって、コロニアの各世代にまたがる人材、外部人材等の協力を得て、県人会の意義、重要性、あり方等につき、十分な意見交換を行い、ビジョン的なものを作成し、日本政府、地方庁、コロニアの組織、ブラジル当局等に県人会に対する理解を深めてもらうようにしてはどうであろうか。おそらく、このビジョンの策定に関しての最大の問題は、1世と2世の間にある考え方の相違、県連及び県人会の企画力、実行力が必ずしも十分なものとは言えないことがあげられる。県連の組織と機能が格段に強化されることを望みたい。

◆「世代交代を進めること」

 1世、2世の高年齢化とともに、県人会の会員数が減少し、活動が少しずつ停滞化するのは、ある意味で自然な流れである。しかし、1世、2世が、県人会の重要なポストにとどまっている限り、更なる発展は難しいと考えたほうが良い。もちろん、自分たちの過去の偉大なる貢献について1世、2世が持っている意識は尊重すべきではあるが、3世、4世に運営や活動を任せ、自分たちは、県人会の中に、「高年齢クラブ」や「シニア・クラブ」を作り、引き続き活動をすればいいのである。おそらく、若い世代の人々がいろいろなイベントを積極的に組織しようとすればするほど1世の役員との軋轢が生じることが考えられる。1世は、過去の栄光を忘れる努力が必要である。今、日系人の日本語の普及が大きな問題となっている。世代が進むにつれ、継承言語としての日本語の普及が難しくなっている。3世以降の世代にとって、日本や日本語も遠ざかっている現状である。国や日本語についての関心も薄れている状況にあって、県に対する思い入れは、さらに薄れるものと考えたほうがいい。会員数の減少については、県や日本のアミーゴになりうるブラジル人たちにも、入会を勧めることも考慮に入れたほうが良い。ただし、日本や県に関心があり、会費も支払ってくれるのが条件である。県連のホームページをみていると、宮崎県人会では、運営を青年部に移行したとのことである。この行動は勇気を与えるものである。またブラジル熊本県文化交流協会(熊本県人会)の場合、この5年以内に約40人の若者が参入、全員2~30歳代で、運動会、ふりかけ祭り、芸能祭などで大活躍中とのことである。日本人幹部は2人だけで、毎月の理事会もポルトガル語になっている。このような傾向が続くことを期待したい。

◆「ホームページを立ち上げること・充実させること」

 前述のようにホームページを保有している県人会は、全体の3分の1である。何をやったのか何をやろうとしているのかを知らせる努力をしないと会の活性化は望めないし、ホームページの作成は、会員増を図る上でも重要である。ただホームページを作成するとなれば、若手の助力が必須である。ただ若手だと当然ながらポルトガル語になろう。と言って、母県の県民にも活動ぶりを知ってもらうことも必要である。そこで、ポルトガル語版をブラジルで作成し、日本語版を母県で作成し、合体させるというのはいかがであろうか?県にはポルトガル語のできる職員がいなければ、英語を媒介とすることも可能である。もちろん独自で両国語のホームページを作成できる県人会は従来通りのやり方をすれば良い。

 予算とマンパワーの問題はいつも存在するが、各県人会と県連、県連と一般財団法人自治体国際化協会(クレア)、県連と海外日系人協会との連携が望まれる。また県人会の総元締めの県連の事務局を強化することや2か国語の堪能なスタッフを揃えることも必須であろう。

 最大の問題は言葉の壁であるが、上記の方法に加え、出稼ぎの帰国子女の活用も大いに検討すべきである。帰国子女で素晴らしい能力を持ち、ボランテイア精神にあふれた人材が多数いるはずである。彼らをうまく活用する創意工夫を期待したい。

◆「フェスチバル・ド・ジャポンにより大きなエネルギーを投入すること」

 前述のようにフェスチバル・ド・ジャポンの規模、動員力は圧倒的である。そこで各県もこのイベントに最大のエネルギーを費やし、できれば、相当程度の収益が出るメカニズムをつくるというのはどうであろうか?1県人会のイベントであれば、動員力もそれほどでなく、収益もそれほど出ないと思われるが、フェスチバルだと可能である。県人会の結束を図ることができるし、若者のボランテイア活動も期待でき、次代の指導者の育成にも繋がる。またフェスチヴァウを媒介として、非日系で、日本に大きな関心を持つブラジル人を多数、ボランティアとして協力してもらい一気に親日ブラジル人のネットワークを構築するというのはどうであろうか。従来よりもっと母県の協力もお願いし、県や国の広報活動の展開も期待したいところである。日本政府や地方庁は、現在、VISIT JAPANキャンペーンやインバウンド旅行やクールジャパンの振興に積極的であるので、良い機会と言えよう。県側もフェスチバルをもっと有効に活用するような、種々のアイデアを出すことが望まれる。(つづく)

【筆者略歴】桜井悌司

 1945年京都生まれ。1967年より2008年まで41年間ジェトロ勤務。メキシコ、チリ・サンティアゴ所長、ミラノ所長、サンパウロ所長、展示事業部長、監事。2008年から2015年まで、大阪の関西外国語大学教授として、ラテンアメリカについて講義。現在、日本ブラジル中央協会常務理事、ラテンアメリカ協会理事、海外日系人協会評議員。

2018年5月26日付

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