特別寄稿 在サンパウロの県人会について考えたこと② 日本ブラジル中央協会常務理事・桜井 悌司

◆5 県人会の役割と業務

 県人会の設立のもともとの理由は、出身県との繋がりを維持するとともに、同県人間の友好・親善・協力を図ることにある。とは言え、母県にとって、どういう意義があるのか、当該県出身の移住者にとってどういう役割と意義があるのかを設立当初に立ち返って考えてみる必要があろう。県人会の具体的な活動となると、県連のホームページと数少ない県人会のホームページを参照することに頼らざるをえないため、活動の詳細を理解することは困難であるが、その前提で話を進める。

◆「フェスチバル・ド・ ジャポン(FESTIVAL DO JAPÃO 日本祭り)への参加・出展」

 本連載エッセイ80でフェスチバル・ド・ジャポンについて取り上げたが、本祭りは、世界で開催される最大の日本祭りであり、主催者の県連にとっても、最重要プロジェクトである。47の県人会がこぞって参加するこの祭りは、県人会の維持と結束にかかせない。各県は、自分たちの県の誇る料理、食品、民芸品、特産品を展示・販売する。また、ステージでは、民謡や伝統舞踊を披露する。各県の出身者が、自分たちのアイデンティティーを存分に発揮できる場である。各県人会の人々も積極的にボランティアとして参加している。県によって異なるが、3日間で延べ平均100人以上の若い日系人等が手伝っている。フェスチバルの運営に携わっている若者の数は、1000人を超える。開催月は毎年7月であるが、この時期は冬休みに当たり、多数の大学生が手伝ってくれる。しかも、この祭りを手伝うと、ボランティアで手伝ったことの公的証明書が発行され、大学の単位を取れるのでお互いにとってメリットがある。おそらく、このプログラムがなければ、県人会組織は、相当弱体化したに違いない。その意味で、県人会にとって、日本祭りの重要性をいくら誇張しても誇張しすぎることはない。

◆「県人会独自で組織する祭り」

 フェスチバル・ド・ジャポンに加えて、各県人会が行う祭りやイベントも多数ある。

 もともと、会員の親睦会として始まったが、現在は県人会の資金稼ぎのイベントとして欠かすことができない。どの県人会も会員が激減し、会費を支払ってくれる人がすくなくなっているため県人会の維持・運営資金が十分ではない。以前は、母県から補助金が出ている県人会も少なくなかったが、今はほとんどなくなっている。このため、イベントや会館の施設の賃貸料で賄うしかないのが実情である。

 祭りの内容を見ると、主として、各県に関連した伝統祭りが多い。例えば、北海道の北海道祭り、宮城県のたなばた祭り、あおば祭り、岡山県のひな祭り、香川県のこんぴら祭り、高知県の土佐祭り、熊本県の芸能祭り、沖縄県の沖縄角力大会、琉球民謡コンクール等である。郷土料理や食品を扱う祭りも多い。ラーメン祭りは、北海道、福島県、三重県、焼きそば祭りは、島根県、高知県、佐賀県がやっている。その他、岩手県のわんこそば祭り、山形県のいも煮会、三重県のすき焼き祭り、奈良県のカレー・フェステイバル等がある。会員同士の親睦がメインと思われるが、ブラジル料理のフェイジョアーダをとりあげる県も、新潟県、岡山県、佐賀県の3県がある。

◆「他県と合同で開催する祭りやイベント」

 1県ではインパクトが強くないので、他県と協力して行う祭りやイベントは、注目に値する。例えば、愛知県・和歌山県・長野県・滋賀県・大分県の5県が協力して開催する「屋台祭り」や九州の8県共催の「8県対抗文化祭」があげられる。その後、判明したところでは、北海道・東北ブロック、中国ブロックでも同様の運動会を開催しているようだ。この方式は、今後の県人会活動の活性化には大いに役立つし、新しい方向性を示すものと考えられる。今後は、1県人会単位ではなく、日本でも話題になっている道州制や関東、東北、信越、関西、中部、中国、四国、九州などの区割りによる移行を目指すときに有効だと考えられる。

◆「会員間の親睦行事」

 これには、県人会館で行う俳句、華道、水彩画、陶芸、書道等を学ぶ勉強会的なもの、一緒にピクニックや旅行に出かけるイベント、餅つき大会やフェイジョアーダ・パーティ等がある。問題は、県人会の会員の高齢化が進み、1世の場合だと平均80歳を超えている。1人では県人会会館にも来ることができず、息子・娘、孫などに付き添って来てもらわざるを得ない。一緒に楽しむのではなく、送迎だけする場合が多いようだ。若者も参加するイベントが要望される。

◆「母県との交流事業」

 県人会の重要な行事である。毎年ではないが、節目の○X周年には、母県から県知事、副知事、市長、商工会議所会頭等が訪伯し、ブラジル当局への表敬訪問、日系コロニア団体、総領事館・在伯日本企業との意見交換会を行う。訪問団が、記念品を寄贈する場合もある。例えば、2017年のポルトアレグレの第6回日本祭りは、金沢市との姉妹都市50周年記念にあたり、金沢市からも副市長以下15名のデレゲーションがポルトアレグレ市を訪問した。金沢市の踊りや加賀友禅染めの実演等文化芸能を披露するとともに、市内の公園に、金沢市から運ばれた「ことじ灯篭」を設置した。また、2016年には、長崎県からサントスに路面電車と龍祭りの龍体が寄贈された。母県からのミッションの派遣は、県人会の維持・発展のために重要な役割を果たすと言えよう。

 現在、母県側による県人会への支援は年々薄れてきている。一方、姉妹都市交流の方が予算をつけやすいようだ。例えば、兵庫県の場合、パラナ州との姉妹関係を重視しており、滋賀県も、リオ・グランデ・ド・スル州との姉妹州県40周年に当たる2020年には、知事一行の来伯が決定しているようだ。県人会としては、そレラ予算の一部でも回して欲しいところであろう。

 母県との留学生・研修生の交流も極めて重要である。県連のホームページ上では、このプログラムの全容をとらえることは困難であるが、交流計画のある県は、岩手県、茨城県、富山県、長野県、岐阜県、大阪府、兵庫県、鳥取県、岡山県、徳島県、愛媛県、福岡県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県等と多数ある。母県としては、留学生・研修生の交換・派遣プログラムは、今後とも継続・強化することが望まれる。

 もともと、県費留学生、研修制度は47都道府県すべてが行っていた。外務省が移住予算を持っていた時代には、この留学、研修制度を支援し、半額を政府(外務省の移住予算)が負担していた。しかし、この移住予算がなくなり、外務省の負担がゼロとなった時から、県側も負担が増えることを理由に、この制度を廃止したり受け入れ人数を減らしたりしてきた。

 県人会としては、若い人たちを県人会に引き付ける手段としてこの留学、研修制度の重要性を認識しており、ことあるごとに復活を陳情しているそうだ。

 安倍首相がブラジルを訪問し、日系人の人材育成を重要視し、JICA枠での研修生を大幅に増加したが、日系社会の活性化につながるような工夫が望まれる。(つづく)

 【筆者略歴】桜井悌司

 1945年京都生まれ。1967年より2008年まで41年間ジェトロ勤務。メキシコ、チリ・サンテイアゴ所長、ミラノ所長、サンパウロ所長、展示事業部長、監事。2008年から2015年まで、大阪の関西外国語大学教授として、ラテンアメリカについて講義。現在、日本ブラジル中央協会常務理事、ラテンアメリカ協会理事、海外日系人協会評議員。

2018年5月25日付

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