特別寄稿 柿栽培 あれこれ ― ピエダーデ 西尾 章子

 果樹栽培を始めて45年余、まさか、この年齢(83歳)まで出来るとは思いませんでした。健康に恵まれ、周囲の人の温かい支えと消費者の喜びが原動力となっています。でも1人での柿栽培は雑木の繁茂、湿地の拡大等、環境が許さなくなっています。

 先日、実バエの被害を訴えられる方がいましたのでこれまでの経験を記し、ご参考にしていただければ幸いです。

     ◎

 まず、失敗から。

 1 柿は意外と大食漢です。古くなると施肥量が足りないと木ばかり太り、経済効率が悪くなります。亡夫は寿命を79歳(家族の死)を目途にしていた関係で台木、苗木を作りながら改植、枝の更新もしていません。若木ほど効率大、18~20年で更新、乃至改植をおすすめします。穂木の先端に近い丸い芽を接げば結実が早く、樹勢も落ち着き、成園が容易です。着果過多は禁物。

 2 多目的網の購入。最初のネットはCACでA社の製品を購入、畑で必要な長さに蚊取り線香で焼き切りました。新梢が伸びても突き出ることなく、苔の付着も殆どありません。最近は白で光線に対して強化処理されているものもあるようです。次に購入したのは、鋏で切れるB社の製品です。光線を平均にするために東京御所の天井はA、Bを交互に繋ぎ合わせました。ところがBには苔が付着、伸長した枝は突き出る、その上、苔にはスス病スリップスが寄生、その下の枝には苔が付き、果実は汚損果多発。その被害は鮮明です。購入時には、よくご検討ください。

 3 土壌分析。10年以上の依頼先は、硼素(B)の検出値が低く(0・3~0・4)、毎年の施用で過剰害(最初は過不足がわからなかった)を出しました。東京御所は葉の主脈の横に細かい亀裂が入り、折れることも。落弁し、ひどい時には開花せずに弁だけ落下、その分、果頂部の傷果は皆無です。富有は症状が異なり新梢の元葉の方から葉縁が黄化、落葉することもある。Bは発蕾期に集中的に土壌施用がよいと思います。

     ◎

 他に柿から学んだことを箇条書きにします。分量は木の大小によって異なりますので数値で記すことは出来ません。

 1 発蕾期から、硫酸Mgの土壌施用、果梗が伸び作業がしやすくなります。(西尾では東京御所100g、富有200g)

 2 幼果期に尿素の葉面散布(U300g/水100L)。様子を見ながら3~4回。果高を伸ばし、授粉樹なしでもオッコ(空洞)を防げます。但し、遅れ花には効果はありません。収穫期に果高が高く空洞があるのは初期のN不足、後期のN過剰でKとのバランスが取れていない。Nは果高伸長(扁平果は初期のN不足)、Kは肥大。

 3 葉果比を重視する人がいますが、西尾は有効葉面積と考えています。初期の尿素の使用で少し葉が大きくなるので不要な立ち枝は殆ど剪除して、通風、採光に留意。

 4 結果母枝は魚の骨を横に(カレイ、平目)した形をイメージ、結果枝が重ならないよう間隔を取り、必要なら捻枝で翌年の枝を確保、枝は出来るだけ主枝、亜主枝に直角に。

 5 着果数は1㎡8個以下に抑えています。7により大果でもヘタスキは防げます。

 6 柿は意外と大食漢です。結果枝の果実着生部から先が細るようでは肥料不足です。特に、東京御所は増量で防げました。

 7 芯ぐされ果のセンチュウ研究からその防除対策として株元への消石灰施用で芯ぐされ果とヘタスキがなくなりました。昨季の柿は本の執筆で消石灰を手抜き、芯ぐされ、ヘタスキ共に散見しました。

 8 化学農薬を使用せず、柿酢、木酢、ハーブのピンガ抽出液等を散布。現代農業で石灰防除を読んで、消石灰(100~300g)+全乳(200~400ml)/100リットル水に転換して、灰色カビ病、タンソ病が出なくなり、実バエ、カメムシの被害も少なくなりました。(初期は懸濁液、着色期から消石灰はバケツで溶いて上澄み使用)ベゾーロバッキンニャ袋の中のスリップスには効果なし。ニーム、ボア・ノイテ、アマリリスの球根の抽出液実施=初期のみの予定です。

 9 アタナジア(タンジー)は、ジョアニンニャを増やしてくれます。

 10 有機物の株元施用は芯ぐされ、ヘタスキを助長します。

 11 ペットボトル(柿酢砂糖水)での蛾の誘殺は、ラガッタの発生密度を下げます。

 12 日中、ミニアスベッソールの潅水は、2~3度温度を下げます。

 13 消費者が喜ぶのはやはり甘い柿。糖度を上げるために微量要素の施用、アミノ酸(自家製)の葉面散布、現代農業に習って牛用ミネラル塩(10~15kg/10a)を1月に土壌施用。

 14 酷暑、曇雨天に対応するため、自家製光合成菌(ガラスビンに魚のエラと水を入れ、蓋をして日向に放置。エサとして西尾ではフランゴのソーブレ・コッシャを叩いて入れている。いくらでも増える)100ml/100l水。

 15 他にアルカリで使える資材も混用。Si、Ca、K、etc。

 16 散布は新月、満月の前後で月2回の消毒(?)で済んでいます。

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 以上、思い出すままに記しました。西尾の柿の絶頂期は、耕運機を使って、0・8~1メートルのバレッタを掘り、10年分と称して熔隣、FTE有機物を天地返しの土に混用したことと思われます。その後、質量が落ち始めても誰にも理由が分からず、勉強を始めて持ち出しに補給が追い付いていないことを知りました。「やっと作る柿になった」と夫・西尾之が喜ぶまで10年かかりました。

 そして、発病、他界。それから丸6年。省力、低コスト、大玉高品質を無農薬で、消費者に喜んで頂ける柿を目指して1人で頑張っていますが、昨年来、本の執筆で手抜き、手遅れ、思うようには参りません。精神的、肉体的に疲れ果てたというのが本音です。

2017年8月29日付

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