狂言の「豊かな笑い」㊤ 小笠原匡・弘晃親子が来伯 ポ語織り交ぜた古典演目を披露

狂言の「豊かな笑い」㊤ 小笠原匡・弘晃親子が来伯 ポ語織り交ぜた古典演目を披露
『盆山』劇中、泥棒が鯛の真似をする一幕
狂言の「豊かな笑い」㊤ 小笠原匡・弘晃親子が来伯 ポ語織り交ぜた古典演目を披露
公演後に花束を渡された小笠原匡氏と息子・弘晃氏(左から)

 HISブラジル(佐々木伸仁社長)主催の「狂言師小笠原匡(ただし)サンパウロ(聖)公演」が11月15、16両日、聖市リベルダーデ区の文協大講堂で開催された。両日計約1100人(主催者発表)が来場。公演中には会場が幾度もどっと笑いで沸くなど、盛況となった。16日の公演前には聖市内の日伯文化連盟(アリアンサ、大城幸夫理事長)の文化センターで能楽演者向けのワークショップが行われ、喜劇の裏に散りばめられた日本伝統文化の奥深さが垣間見られた。また、小笠原氏は本紙の単独インタビューにも応じ、伯国の日系社会に対して狂言が持つ力などを語った。

 16日の公演冒頭、小笠原氏から狂言の特徴の紹介が、実演も交えながらポルトガル語同時通訳付きで実施。今回の演目のあらすじ解説も行われた。その後、いよいよ一つ目の演目『盆山(ぼんさん)』の上演となり、待ちに待った観客の前に小笠原氏の息子・弘晃(ひろあき)氏(16)が袴姿でゆっくりと登場した。「Eu sou ladrão(私は泥棒だ)」と開口一番。観客の意表を突くポルトガル語に、早速会場に笑いが起こった。

 「この辺りの者でござる」と、狂言の象徴的な台詞も述べられると、観客は舞台の世界に引き込まれていった。

 『盆山』は、盆山(盆の上に石や砂で風景をかたどった置物)をたくさん持っている男を羨ましく思った近所の男が、盗みに行く話。夜にその屋敷に忍び込んだこの泥棒は、物色している時に主人(匡氏)に気づかれてしまう。主人の方はこの泥棒が顔見知りだと気付くが、どうせなら「なぶってやろう」と思いつく。盆山の陰に隠れる泥棒に向かって、「あれは犬か、猿か」と言うと、泥棒は必死になって鳴き真似をして、気づかれまいとする。こうした悪あがきをする泥棒の愚かさが観客の心をくすぐる。

 最後には鯛(たい)の真似を迫られる。追い詰められた泥棒が、扇(おうぎ)を開いて背中に立て、鯛の尾ヒレに見立てると、会場は大笑い。そのまま「タイタイ」と鳴きながら舞台上からはけていくと、笑いと共に大きな拍手が送られた。

 続いて披露されたもう一つの演目は、『昆布売り(こぶうり)』。太刀を持った大名(匡氏)が、通りがかった昆布売りの商人(弘晃氏)に太刀を持たせてみる。持ち方が悪いなどと散々なぶられた商人は、頭に来て太刀を抜く。ここから立場が逆転してしまい、この商人は大名に昆布を売らせる。売り声の強要も、謡節(うたいぶし)、浄瑠璃節(じょうるりぶし)、踊り節(おどりぶし)とどんどんとエスカレートして行き、最後はそのまま昆布売は太刀も奪って逃げ去っていく。

 いつの時代にも通ずる、立場逆転の痛快な風刺劇だ。こちらもポルトガル語を織り交ぜながら、観客を魅了し、笑い声は絶えなかった。

 公演終了後、舞台上であいさつに立った小笠原氏は、「またぜひブラジルに来て、皆さん方に新しいレパートリー(演目)をお見せして、狂言の魅力をお見せしたい」と語ると、観客からはスタンディングオベーションで拍手が送られた。

 公演を鑑賞していた聖市内在住のカイロさん(25、非日系)は、普段あまり日本文化と接する機会がないという。「印象的だったのは、歩いたり立ったりといった一瞬一瞬(の所作)の素晴らしさ。(劇中)ポルトガル語を混ぜたり、公演前の解説も良かった」と楽しんだ様子。

 同じく聖市内在住の久保秀之さん(48、神奈川)は、「日本で狂言を見たことがなかったので、日本の文化を知らないなあと思わされた。(古い日本語の台詞も)ポルトガル語があって(かえって)分かりやすかった」と語り、会場を後にした。(河)(つづく)

2017年12月2日付

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