狂言の「豊かな笑い」㊥ WSで所作演技の奥深さを指導

狂言の「豊かな笑い」㊥ WSで所作演技の奥深さを指導
「構え」を教える小笠原匡氏(左手前)
狂言の「豊かな笑い」㊥ WSで所作演技の奥深さを指導
ワークショップに参加した一同

 盛況となった11月15、16日の「狂言師小笠原匡(ただし)サンパウロ(聖)公演」。そもそも狂言とは何か、という小笠原氏自身による解説から公演は始まった。

 狂言は遡(さかのぼ)ること約650年。室町時代に現在の様式に近いものが確立されたとされる。能と狂言を合わせて能楽と呼ばれるが、能楽は、現在まで一度も途絶えることなく続いている芝居の中で世界最古とも言われている。

 また、同16日に日伯文化連盟(アリアンサ、大城幸夫理事長)の文化センターで行われた能楽演者向けのワークショップ(WS)では、一般に能は悲劇で狂言は喜劇と言われることに触れ、小笠原氏は「(それだけではなく、)能は『死』を、狂言は『生』をテーマにしていると思う。それぞれ切っては切れないから、2つに1つなのでは思っている」と語った。

 能楽の前史は、奈良時代に唐から渡ってきた大衆芸能・散楽(さんがく)の影響から語られることが一般的だが、小笠原氏は、それより以前の太古の日本の「神に祈りを捧げる儀式からだんだんと形が整ってきた」ものと説明。そうした儀式的な所作が残っている例として、『翁(おきな)』と『三番叟(さんばそう)』を挙げ、明確なストーリーを持たない祈祷の舞の演目として紹介した。

 実演しながら説明してみせたのは、狂言の表象性。狂言は、非常に限られた舞台装置や衣装、道具、所作で多くのことを鑑賞者に想像させ、感じさせる。小笠原氏は実際に扇(おうぎ、せんすのこと)を取り出して広げ、水平に持ち、とっくりに見立てた。

 「さあ、さあ、お飲みあれ。ドブ、ドブ、ドブドブドブ!」と酒を注いで見せると、もう一つの狂言の特徴であるオノマトペ(擬音語と擬態語)にも言及。こうして小道具として本物のとっくりを用意することもなく、液体の効果音をスピーカーから流すこともなく、扇一つで、雫の音まで演者自身が口で発して鑑賞者に想像させるのだ。狂言で使用される擬音語そのものも少し変わっていて、『盆山』の公演中に泥棒が犬の鳴き声を真似た際には「びよびよ」と表現されたが、これも狂言独特の擬音語だ。

 今度は扇を箸(はし)として使う際を例に取り、箸の素材や色も鑑賞者それぞれが想像する何にでもなりうると指摘。こうした鑑賞者に想像させる特徴を持つ狂言は、アニミズム信仰を持ち、実体の持たない八百万(やおよろず)の神々を信仰する民族として、「見えないものを想像することや信じることが好きな民族だからこそ誕生したのでは」と論を展開した。

 ワークショップでは、「構え」、「いだつ」、「正座」といった基本的な狂言の所作から、笑い方、屋敷の戸を開ける一連の動きなどを、実演を交えながら参加者に指導。身体を緊張させて表現することが、わずか一足分(約30センチ)の動きでも鑑賞者に迫力を持って動きを伝えることにつながるといったことなどが説かれた。

 終了後、ワークショップに参加していた、能楽経験約1年半のジョアン・ペドロ・プッポさん(30、非日系)は、「凄いと思うのは、(動きが)小さくてもとても深くて難しいということ。重い物を動かすところでのイメージ(想像すること)が難しいと感じた」と、充実した表情で汗を拭いながら語った。(河)(つづく)

2017年12月5日付

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