環境と気候変動⑤ CO2削減政策はどこへ向かうのか 成田修吾

 パリ協定のそもそもの実現には、米中のリーダーたちが重要な役割を果たしていた。オバマ前大統領と習近平国家主席が2014年に発表した気候変動に関する共同声明は「重大な分岐点」だったと、環境シンクタンク世界資源研究所の上級研究員アンドリュー・ライト氏は言う。「あの両国があそこまで積極的に、また公に協力しているのを見たのは初めてでした」(GNニュース)

 その協力関係が事実上崩れようとしている今、他の諸外国はこの先どちらの方向へ進むのかという疑問が当然、出てくる。トランプ大統領が化石燃料の推進に公然と興味を示したことで、サウジアラビアの石油大臣は既に、米国への石油関連投資を拡大するかもしれないと発言した。ライト氏はこれに関して、トランプ大統領のせいでパリ協定の目標が形骸化してしまいかねない一例だと懸念する。しかし、「中国が方針を変えることなく、パリ協定で定められた目標を守り通す意思を示すことができれば、大きな助けになるでしょう」とも言う。

 ところが、中国は自国の石炭火力発電所の建設こそ取りやめたものの、東南アジアなどでの新規建設には資金を出し続けている。以前は、投資を控えるよう米国から圧力があったが、今はそれもなくなろうとしており、ライト氏は「空席となった主導国の座に中国が本気で着こうとしていても…これで一貫性を保てるのでしょうか」と疑問を呈している。

 クリーンエネルギーを推進する非営利団体ロッキー・マウンテン研究所の最高経営責任者ジュールス・コーテンホースト氏は、温室効果ガスの削減目標を拒否するという決定は、米国にとってその字面以上に重い意味を持つと語る。「人類が直面する最大の問題に関して、米国は指導的役割を放棄することになります」。そして、その役割を中国やその他の国へ明け渡そうとしている。「一度そのような決断をしたら、もう元には戻れません」。

 気候変動に関する政策がどうであれ、再生可能エネルギーは、価格が急上昇することもある化石燃料への緩衝材となる。また、回復力のある電力網を構築し、大気もきれいにするとして注目が集まっている。ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンスによると、2040年までに世界で8兆ドル近くが再生可能エネルギーに投資される見通しだ。米国も、その市場シェア獲得に奔走している。

 インドが太陽光発電用機材の地元調達率を確保するために輸入規制を設けようとした際には、世界貿易機関へ訴えて勝訴した。インドでは、22年までに新たに太陽光発電を100ギガワットまで拡大することを目標としているが、これは現在の米国の3倍近い容量にあたる。太陽光エネルギー関連の企業にとっては大きなビジネスチャンスになる。

 ここでもおこぼれにあずかるのは、世界有数の風力発電と太陽光発電の製造工場を有する中国だろう。コーテンホースト氏は警告する。「再生可能エネルギーへの移行から米国が手を引くなら、空から降ってきた市場機会を中国がこれ幸いと、さらっていくでしょう」(つづく)

2017年4月27日付

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