環境と気候変動⑥ 温暖化対策主導権が中国へ? 成田修吾

 トランプ米大統領は3月28日、オバマ政権時代の気候変動対策を大幅に見直す大統領令に署名した。この問題で世界をけん引してきた米国は、表舞台から立ち去ろうとしている。代わりに、今後は中国が温暖化対策で主導権を握ることになりそうだ。

 オバマ前大統領の取り組みは、2015年にパリの気候変動枠組条約締約国会議で採択された米国の二酸化炭素(CO2)排出量削減目標を達成しようというものだった。

 対して、トランプ大統領令では、国内発電所のCO2排出量を規制するという環境保護局のクリーンパワー計画を撤回するほか、炭素排出によって将来起こりうる社会的代償の見積もりを下方修正し、連邦政府による炭素排出量の追跡調査も見直される。また、国有地での石炭採掘の差し止めを命じた16年の規制の撤回と、さらには国家安全保障レベルでの脅威となりうる気候変動の最悪のシナリオに備える前政権の大統領令の撤回を含む。(GNニュース)

 「今回の大統領令は、石炭産業の雇用を救済するためだと言われています。簡単に言えば、そういうことです」。石炭火力発電を支持する企業で組織された電力信頼性調整委員会(ERCC)のスコット・シーガル氏は言う。「大統領令は、安価で安定したベースロード発電に焦点を置いています。ベースロード発電重視の政策には、石炭も含まれるのです」。

 一方、中国のリーダーたちは石炭による発電を減らす方向へ動いており、炭素排出量を削減するには世界的に足並みをそろえる必要があるとの姿勢を改めて強調した。

 中国には石炭を減らす理由が山のようにある。習近平国家主席は、今年1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムの年次総会で、次のように発言している。「パリ協定が採択されるまでの道のりは困難なものだった。すべての締約国は、これに背を向けることなくやり通すべきだ。未来の世代に我々が負うべき責任なのだから」。

 15年に、少なくとも195カ国がパリ協定に合意し、地球温暖化の原因となるCO2の排出削減に取り組む約束をした。オバマ前大統領の下、米国も25年までに温室効果ガスの排出量を05年比で28%まで削減すると約束した。地球の気温が上がり、その結果起こる海面上昇や異常気象などを示す新たな証拠が毎日のように出てくる中、各国は危機感を募らせている。しかし、パリ協定の排出削減目標には法的拘束力がないため、トランプ氏が大統領令で米国の方針を転換させても問題にはならない。

 排出量削減をめぐる米国の今後の方針が不透明になりつつある一方で、世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、石炭の使用量を減らして、再生可能エネルギーを拡大する取り組みを続けている。今年初めには103の石炭火力発電所の新規建設計画を取りやめ、国家エネルギー局は20年までに3600億ドル以上を再生可能エネルギーに投じる計画を発表した。

 さらに、パリ協定の一環として、30年をピークにCO2排出量を減少に転じさせ、エネルギー量の5分の1を非化石燃料で占めることを目標に掲げた。一部報道によれば、排出量削減に関しては、既に予定よりも早く進んでいるという。

 中国がこれらの取り組みを貫くのは、ただ単に模範的な地球市民になろうとしているだけではない。「こうした目標の多くは、国内の別の目的と大部分が重なるものでもあるのです。中でも特に差し迫っているのが、大気汚染対策です」と、エネルギー、経済、環境に関する米ハーバード大学チャイナ・プロジェクトのディレクター、クリス・ニールセン氏は言う。「パリ協定を守ることは、中国にとって大きな利益になるのです」。

 スモッグ問題は中国経済に打撃を与え、医療費は増大し、生産性は落ち、観光業の妨げにもなっている。つまり、中国には石炭の使用を削減して空気をきれいにすべき理由が山のようにある。

 パリ協定で中国が設定した削減目標によると、30年までは温室効果ガスの排出を増やしてもいいことになっているので、進捗状況をあまり過大評価してはならないとニールセン氏は指摘する。しかしながら、中国は水力発電の大幅な拡大や燃料効率基準の厳格化など、あらゆる手段を取って大気汚染削減に努めている。また全体的に、重工業からサービス業へ経済活動を転換させようという動きもある。(つづく)

2017年4月28日付

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