環境・科学② 森林破壊は自国の財産を失うこと 成田修吾

 この記事原稿を書いている間にも、5日付本紙に「北東部2州の大雨被害 50市以上が非常事態に」の記事が掲載された。記事構想を練っている間にも、今度は6日付フォーリャ・デ・サンパウロ紙に南部リオ・グランデ・ド・スル州とサンタ・カタリーナ州で大雨浸水の被害が報道された。

 今やブラジルは大雨と旱魃が繰り返され、被害は年々拡大してきている。地球温暖化の強い影響が現れてきていることは確かである。

 地球温暖化をこれ以上進化させないためには、欧米や日本は協力して代替エネルギー輸入と消費を減らすこと。中国やインドはこれ以上、石炭を燃やさないこと。ブラジルは地球財産である森林を破壊しないこと。この3つが実行されれば、確実に温暖化を食い止められることは判っている。

 世界の森林破壊の原因は、木材としての伐採によるものが最も顕著で、日本の場合は、戦後の高度経済成長に伴う木材需要に対応するため、大規模に天然林が伐採され、住宅の梁や柱、家具材などとして消費された。こうして伐採された所にスギなどが大量に植林がなされた経緯がある。現在では安価な外材の輸入の増加とともに国産木材が売れなくなったことと、林業就労者の収入減少が影響で林業就労者も減少した。そのため間伐や間引きなどの手入れが行き届いていない不成績造林地が増加し、日本各地で問題になっている。手入れの行き届いていない所では、木々が密集した状態で日光が十分に当たらなく細い木ばかりになっている。もし、欧米や日本の先進諸国が必要としている木材確保で、ブラジルが森林伐採で資材または完成品を輸出しているとしたなら、外貨稼ぎ目的で自国の自然財産を略奪していることになる。

 また、燃焼材木(薪炭材)としての利用も多い。ミナス・ジェライス州の森林破壊は、伐採の跡地にユーカリを植林して、燃焼材木の確保で製鉄所のエネルギーを得る目的で製鉄量増加に比例して山林破壊が進むことになる。森林破壊の跡地に数十年の間は自然林には戻れなくなる。

 アフリカや中南米の熱帯地域では、木質燃料の比率が非常に高い状況にあり、薪炭材の利用が急増している。これらの地域では、貧困のためエネルギー源は安価な薪炭材に頼らざるを得ず、熱効率の悪い調理用カマドが使用されている等の事情から、人口の急増に伴って、家庭用エネルギー源としての薪炭利用が増加したとの見方もある。その一方、家庭用の薪炭については、枯木や枝木を採取することが主で、大木を伐採して薪炭材として利用することは少ないとの意見もある。

 これら薪炭材をめぐる森林伐採の問題については、世界銀行の研究報告によれば「世界で伐採される(建材も製紙用の伐採も全て含んだ上で)木材の6本に1本は、葉タバコを乾燥するために使用されている」との報告がある。 また、1998年には、世界公衆衛生協会連盟(WFPHA)の政策文書においても「森林破壊がタバコによる主要な害悪」の1つとして掲げられており、WHO(世界保健機関)からも「途上国でのタバコ栽培と森林破壊についてのカラー図版」が公開されている。 なお、タバコの乾燥に使用される木の伐採の具体的な事例の1つとしては、タンザニアの森林破壊がある。

 施設などの建設目的の伐採による森林破壊もある。道路の敷設に関しては、森林が分断化されることで動物や昆虫などの移動が制限されて車に轢(ひ)かれるなどの問題が起こっており、森林生態系への影響が懸念されている。また、法面の緑化には、外国からの生命力の強い植物の外来種子が用いられることが多く、在来植生を凌駕する場合が多くある。
 宅地造成、建築物の設置、レジャー施設、インフラストラクチャー、送信所・送電線などの鉄塔、林道、焼畑のための伐採による森林破壊も進んでいる。

 森林破壊の歴史は古い。中世ヴェネツィアと森林破壊の例の話はよく知られている。海の女王として栄えた中世のヴェネツィア共和国では、農業の他に海上貿易に必要な輸送船や艦船を建造するための木材確保が重要だった。森林資源の枯渇が進むにつれて木材の確保に苦しむようになり、森林資源の保護や木材の使用を制限する法律が出されるようになった。

 18世紀後半にイギリスから始まった産業革命の背景の1つに森林破壊が関わっていることは周知の通りである。燃料として使用していた木炭の消費により森林資源の枯渇が進み、代替燃料として当時はまだ扱いが困難だった石炭への転換が進められた。いわば、必要に迫られての技術革新が産業革命を起こすきっかけの1つとなったのである。

 保全生態学の観点からは潜在的な(その場所の元々の)植生や地理的な遺伝変異などを考慮した植林がなされるべきだが、現在、一般的に行われている事例ではそうしたことを意識すらされていない場合がほとんどである。また(林業関係以外の)企業が行う植林には、いわゆる「環境に配慮した」活動をしていることにより、企業イメージの向上を図るという側面を利用しているものもある。

 現在の開発途上国における森林利用で忘れてはならないのは、薪採取である。薪採取とは、小枝を刈るのであり、樹木の伐採ではない。森林を再生可能な範囲で利用する限り、固形バイオスの薪は再生可能エネルギーである。森林破壊を食い止めるための有効な解決手段として、世界では麻(亜麻、ケナフなど)の栽培が注目されている。

 麻は一般的に繊維の一つとして認識されているためあまり知られていないが、パルプ原料として栽培も収穫も非常に簡単で、木材はパルプの原料として栽培するために20年以上かかるが、麻は約100日で栽培でき毎年の収穫が可能である。麻が世界で栽培されるようになれば、今までの10分の1のコストで一本の木も切らずに全世界へパルプの供給ができるという試算もある。また、麻は落葉樹の3~4倍もの二酸化炭素を吸収するため、麻の栽培・収穫によるパルプの生産がそのまま地球温暖化の防止にもつながる利点がある。

 しかし、麻は成長が速い分、地中の栄養分を異常に早く吸収するので、土地の劣化が進み砂漠化という別の地球環境問題を引き起こす可能性も指摘されている。(つづく)

2017年6月28日付

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