環境科学⑧ 明らかになった地球温暖化と水の危機  東田修平

 気候変動が地球全体に及ぼす影響を検証する初の包括的かつ国際的なプロジェクトが始動し、最初の結果が報告された。そこから、主要な懸念は水の危機であることがはっきり見えてきた。(ネイチャー誌)

 気候変動ポツダム研究所(ドイツ)の所長であるハンス・ジョアシン氏は、気候変動の影響を研究する最善の方法は何かと考えをめぐらせている時、しばしばヒンズー教の古い寓話を思い出し、探究心に富む6人の盲目の男たちがゾウがどのような動物であるかを知ろうとする話を例に挙げる。それによると、1人はゾウのどっしりした脇腹を手で探り、他の5人はそれぞれ牙、鼻、膝、耳、尾に触れてみるが、結局、6人全員がゾウのことを完全に誤解してしまう、というのだ。

 地球温暖化について多くの人は、まだ身近なこととは考えていないだろう。温暖化問題は影響が体感しにくい上に、正確な予測が難しく、地域により影響の出方が異なることもあって、コンセンサスが得にくいため、現状では十分な対策が取られているとは言えない。

 しかし、世界に目を向けて見ると、気候変動の影響が既に顕在化している現象が数多く存在し、しかもそれは既に私たちの生活に影響を及ぼしていることが分かる。今年、日本を襲ったいくつかの大型台風で被害を受け、避難している人たちの声には、ここ数十年体験したこともないくらいに大雨が降って、土砂が崩れて大変な目に遭ったと口をそろえる。ところが、米国、中国、インドに転じてみると、水資源の枯渇が叫ばれ地球が砂漠化している、というのである。地球規模で水資源を調査した上での推算では、完全に水資源が枯渇に向かっていることが明らかになっているのだ。

 そのために、貯水池の水を長持ちさせる秘策が研究されているという。それは、湖の表面に薄い膜を張って水の蒸発を防ぐ技術が、干ばつに苦しむ米国に希望をもたらすかもしれない、というものである。

 深刻な干ばつに苦しむテキサス州では、アローヘッド湖の水面を膜で覆って水の蒸発を防ぐ実験が行われ、蒸発量を15%減らすことに成功した。数年前から干ばつ続きの米国南西部の水管理当局は、海水の脱塩や人工降雨のための「雲の種まき」などの思い切った方法で水を供給することを真剣に考え始めている。

 一方、起業家たちは、半世紀も前に提案されたがうまくいかずに断念された技術を新たに復活させようと目論んでいる。貯水池の水の減少は大部分が蒸発によるものであるため、表面に蓋をして蒸発のペースを遅くし、少しでも長持ちさせようというのだ。蓋になるのは安価で無害な生分解性物質の膜で、分子1個分(約2nm)の厚さしかない。その効果は実証されたとは言い難いが、2014年にテキサス州で行われた野外実験に期待が寄せられている。(つづく)

2016年12月8日付

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