環境科学⑨ 持続可能な漁業のためには  東田修平

 米国海洋調査研究チームは、漁獲調査結果を元に漁が行われたエリアでは、魚による再循環作用の5割近くが失われていることを発見した。漁によってサンゴ礁に生息する種の数がわずかに減ったとしても、種の減少だけでは再循環を大きく阻害する要因にはならない。最も影響が大きかったのは、食物連鎖の上層にいる大型の魚がいなくなることだった。種の数が保たれても、サンゴのエサと言われる魚たちの尿を排泄する魚が減ってしまうという。「ある種が存続したとしても、その量が大幅に失われた場合、その種が持つ生態系における機能は失われる」そうだ。「生物の保護と言うと、人々はつい『種の数』が減らないようにと考えがちですが、事はそう単純ではない」と研究者は訴える。(NGニュース)

 論文にはこの問題に対する政策提言は含まれていないが、今回の発見は捕獲する魚の大きさに規定を設けることが、漁業に利益をもたらす可能性があることを示唆している。大型の魚を保護すれば、その尿も守られることになり、世界中のサンゴ礁において持続可能な栄養循環の維持につながるだろう。海洋研究学者のローズモンド氏は「人間の行為によって負の反応が生じ、生態系の恩恵が失われるという状況は、これまでに何度も見ています。今回、明らかになったことを生かせれば、自然が損なわれないように人間が価値をもたらすことができるのです」と話す。

 造礁サンゴの繁殖に適している海は、25~30度ほどの高水温、3~4%ほどの高い塩分濃度、深くても水深30メートルほどの浅くてきれいな海域である。地球は西から東へ自転するため、赤道付近では海水が自転に置き去りにされる形で西向きの暖流が発生し、高緯度地方からの寒流がその後に入り込んでいる。太平洋、インド洋、大西洋どれも西側にサンゴ礁が集中し、東側にあまり見られないのはこの理由による。また、大規模なサンゴ礁でも、河口域を避ける形をとっているのが見られる。

 日本では南西諸島や伊豆諸島、小笠原諸島など南部の島嶼部でサンゴ礁が見られるが、サンゴ礁は水温18度ほどまで形成されるので、日本本土でも小規模なものならば対馬海峡以南と房総半島以南の各地で見られる。

 造礁サンゴにはミドリイシ、ノウサンゴ、キクメイシなど数百種類もあるが、これらは直径1センチ足らずのイソギンチャクに似た小さなポリプがたくさん集まって群体をなしたもので、様々な形のサンゴはたくさんのポリプがそれぞれの種類によって独自の骨格を形成したものである。

 礁の外側は急に深くなっており、波も高いが、外礁に囲まれた礁池や礁湖は外礁が激しい波浪を止める天然の防波堤となるため、波が穏やかである。サンゴのすき間は小さな生物の隠れ場所に都合がよく、それらを捕食する大型動物も集まってくる。さらに、礁池の内外には砂浜やアマモ場もできるので、これらも含めるとサンゴ礁には実に多様な環境が作られ、多くの生物が生息することとなる。サンゴ礁は生物多様性の観点からも重要な場所と言えよう。

 元来、珊瑚と呼ばれたのは宝石として使われるサンゴである。深海に生息し、樹枝状の群体を作る。骨格は石灰質で、緻密で固い骨格を作る。花虫綱八方サンゴ亜綱ヤギ目サンゴ科に属し、アカサンゴ、シロサンゴ、モモイロサンゴなどがある。専用の網で漁獲されるが、乱獲による産減が激しいという。(つづく)

2016年12月9日付

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