環境2017(6) アルプスで相次ぐ遺体発見 成田修吾

 7月13日、スイス・アルプスのツァンフルロン氷河の近くで、スイスのスキー会社社員が設備の定期メンテナンスを行っていたところ、氷から突き出している足を見つけた。さらに調べると、靴と帽子、そして凍結して黒ずんだ2人の遺体が見つかった(「氷漬けのヘラジカ2頭見つかる、格闘中だった」)。

 靴職人だったマルスラン・デュムランと教師だったフランシーヌ・デュムランの夫婦が行方不明になったのは、今から75年前のことだ。

 スキー会社のCEO、ベルンハルト・ツァンネン氏は「発見した社員は警備員に通報し、私が警察に連絡しました」と話す。翌14日には、現場にヘリコプターが到着し、遺体を傷つけないように、氷河から大きく氷を切り出した。そして19日には、DNA鑑定によって1942年8月15日に行方不明になったデュムラン夫妻の遺体であることが確認された。

 この件を最初に報じたスイス紙「Le Matin」によると、この雪深い地域から遺体が見つかるのはこれが初めてではない。2012年には1926年に消息を絶った3人の兄弟が、2008年には1954年に遭難した登山者が見つかった。さらに2012年には、08年に山で行方不明になった2人の遺体が見つかっている。1925年以降、アルプスやその周辺では、280人が行方不明になっている。

 「この氷河では、毎年50センチから1メートルほどの氷が失われています」とツァンネン氏は話す。「80年前は、今よりもはるかに大きかったのです」。

 デュムラン夫妻が見つかったのは地球温暖化が原因だと、ツァンネン氏は考えている。氷河が急速に解けたことで、埋もれていた遺体が露出したというわけだ(「【解説】温暖化で生物は?人はどうなる?最新報告」)。

 風光明媚で知られるアルプスだが、氷が着々と解けているのはまぎれもない事実だ。一番の問題は、どのくらいの速さで解けているかだ(「温暖化 消えゆく氷河」)。

 2006年に発表された調査でアルプスの夏季の氷は2100年までに消滅するとされていたが、2007年の調査はさらに厳しい予測となり、氷は50年までに消えるとされている(「[証明する/PROVE]氷河融解」、「消えゆく氷」)。

 スイスのチューリッヒ大学に拠点を置く世界氷河モニタリングサービス(WGMS)の報告書によると、アルプスの氷河の厚みは2000年から10年の間に毎年1メートルずつ減少している(「エベレストの氷河縮小、登山家も証言」)。

 WGMSの所長は、13年の報告書でこの氷の融解を「前例がない」と評している(「南極の「緑化」の速さが3倍に、地球温暖化で」)。

 氷は優れた防腐剤の役割をもつと考えられる。ツァンネン氏は、デュムラン夫妻について「悲劇でした」と言う。「彼らには7人の子どもがいましたが、現在生きているのは2人だけです」

 夫妻の遺体の保存状態が非常に良好だったのは偶然ではない。アルプスのような雪深い山地は寒く乾燥しており、遺体が腐敗する速度は遅い。

 スイス南部のディアブルレ山塊で、75年前に行方不明になった夫婦の遺体が見つかった。遺体とともに、バックパック、ビン、本、時計も見つかっている。

 つまり、氷は非常に優れた防腐剤なのだ。実際、アルプスからは5000年前に死んだ人間の遺体が驚くほど良好な状態で見つかっている。それがアイスマン「エッツィ」だ。エッツタール・アルプスで見つかったことにちなんでそう呼ばれている。エッツィは死後まもなく氷に覆われたため、腐敗を免れたと考えられている(「アイスマンを解凍せよ」)。

 アルプスにはまだ氷に埋もれた遺体があるのだろうか。それは時とともに明らかになるはずだ。(NGニュース、つづく)

2017年10月18日付

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