【座談会】第1回「ブラジル社会に日系コロニアは必要か?」⑤

 山下 譲二(2世)
 今日のテーマにつきましては、ブラジル社会にとって日系コロニアは必要なのかという問題と、日系人にとって日系コロニアは必要なのかという二つの問題があります。
 どちらにしても、今後の日系コロニアを考えるにあたっては、世界の流れの中におけるブラジル、世界の流れの中における日系社会というものを考えていかなければいけないと思います。

 移民100周年を一昨年に迎えたわけですが、この100年という年月は500年の歴史を持つブラジル国家において、非常に大きな比重を占めています。1822年にブラジルが独立した後の近代国家の形成に、日本移民が大きく関与してきたからです。

 百数十年の近代国家であるブラジルに対しての、日本移民100年ということを考えますと、ブラジル社会の発展に対する責任もまた重大で、ブラジルを形成する一分子である日系社会の比重は非常に大きいと感じられます。
 今まで1世の時代には、日系社会として団結して立派な子弟を育て、日本文化を継承するということが、日本的な伝達方法によってごく自然に行われてきました。しかし今度それを子弟たちに伝達する場合、伝達方法そのものが西洋式なものへと変わってくるわけです。

 1世の方が数多くいた時代には、彼らを見習っていくうちに子弟たちも感化されていき、日本の文化が伝承されていったわけですが、1世が減少してきている現在、どのように古くから伝わる文化を伝達していくべきかということが大きな課題になってくると思います。

 例えば寿司職人などにしても、先輩の握り方を見て、それを学ぶというのが日本式の伝承方法だったわけですが、これから将来はきちんとした伝承方法がなければ、日系人に対して日本文化を継承できないという問題があります。私たちはその文化継承についての方向性を定めていかなければならないと思っています。
 近年、ブラジルは世界の注目の的になっています。日系社会もそれに対して大きな目標を掲げるべきではないでしょうか。ブラジル社会に日系人がどのように参加できるのかというところに焦点をあてて考えますと、ブラジル社会においてあらゆる面で対等の交流ができる場が必要だと言えるでしょう。

 例えば先輩たちが築き上げたこの文協ビルにしても、ブラジル社会に対してこういう施設があるともっと宣伝し、利用価値を高めていくような態勢を作ることが大切です。ブラジル社会において最高レベルの交流の場を持つことができれば、そこで文化が育まれていき、日本文化の伝承も行われると思います。

 100周年でも言われたことですが、日系人のみならず、ブラジル人一般の日本文化に対する知識は非常に高いものがあります。現在はインターネットの時代で、私たち日系社会がこれからブラジル社会で活躍するためには、そういう伝承方法も一つの選択肢として考えていかなければなりません。
 ブラジル社会との交流、さらに日本との交流におきましても、ブラジルの政界や財界を通じて日本の政界、財界と交流できるような目標を持って頑張っていかなければいけないと感じています。

 

 千田 曠暁(1世)

 これから先の日系社会を考えるにあたり、ただ闇雲にこの場で議論してそのまま終わりにしてしまうのではなく、実際にそれを実行しながらブラジル社会に貢献していくことがこれからの課題ではないでしょうか。
 そういう意味でも、今日この場で皆さんの意見を聞かせていただいて、自分でできることが何かあるかどうか、参考にさせていただきたいと思います。
 尾形 裕幸(1世)
 私は海外生活が15年ほどになるのですが、色々な国で国籍や人種で不当な差別を受けないために移住者が活動をしているという話を聞いたことがあります。日系コロニアでは、そういうグループが今までは重要な役割を果たしてきたのだろうと考えています。
 ただし、これから3世、4世、5世の時代になったときに日本語を残し続けるというのは非常に難しいことだと思いますので、言葉ではないもので継承していく必要があるのではないでしょうか。
 それは、日系人であるからといって差別を受けたりすることのない環境づくりであったり色々です。国籍や人種、民族でくくったグループが存在しなくても、普通に生活していけるようなものが必要になってくると思います。
 尾形 慶子(1世)
 まだブラジルに来て2か月ですが、私がとても驚いたのは、日系コロニアの皆さんの精神がとても崇高であるということです。
 日本から来たばかりなので、どうしても日本の暗いニュースばかり耳に入ってくるんです。例えば、不況で派遣切りに遭った若い人たちが仕事を失って公園で野宿生活をしていたりとか、精神的に病んでしまって何十年も家から出られない「引きこもり」と呼ばれる人たちが増えていたりします。

 現在の日本は、日系ブラジル人に誇れるようなものではないと思います。ですから、なおさら崇高な精神を持ち続けている日系コロニアの皆さんの姿を見て感激しました。
 そこで一つ思ったのですが、この崇高な姿をブラジル社会に対して、あるいは現在の日本に対してもっとアピールしてみてはいかがでしょうか。

 永田(敏正)さんからお話があったように(6日付本紙に掲載)、ハイチ地震の被災者支援を日系社会が中心となってやろうという考えは、とても良いことだと思います。
 阪神大震災のときに日系社会がボランティアで支援活動を行った際に培った技術やノウハウがあります。もしくは、日本から世界の被災地に行かれているような人たちを日系コロニアが主導となって招いて、ハイチに送ったりするのはどうでしょうか?

 あるいは、ブラジルの農場などに派遣切りにあった日本の失業者たちを招いたり、うつ病にかかってしまっている日本人をブラジルに連れてきたら良い効果が出るのではないかとも思います。ブラジルには日本にない良い部分がたくさんありますので。
 また、剣道や柔道などのスポーツにおいてチャンピオンをブラジルから輩出するというのも、日本に住む日本人に対しても、ブラジルに住む日系人に対しても日系社会をアピールすることにつながると思います。1世の方々の崇高な姿を、もっと広くアピールされていくことで、コロニアの将来も変わってくるのではないでしょうか。

 浅野 サトル(2世)
 私は2世で日本語が上手に話せませんので、ポルトガル語で話させていただきます。私自身は日本語の読み書きがあまりできませんが、コロニアにおいて日系人が日本語を使うことはとても重要だと思っています。
 日系社会の中で生活したり、日本人の生活習慣や文化を理解することが、我々のような2世、そして次の世代にとって必要となってきます。そのためにも、日系コロニアは今後もブラジル国内において絶対に必要であると言えるでしょう。 (つづく、文責編集部)
写真:座談会全体
写真:山下譲二さん、尾形裕幸さん、千田曠暁さん(左から)
写真:尾形慶子さん(左下)、浅野サトルさん(右下の左)

2010年2月9日付

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