第9回文協総合美術展 作品へ込められた思い

第9回文協総合美術展 作品へ込められた思い
「一瞬」(手前)、「黒い雨」(右奥)、「涙ポロポロ」(左奥)

「いつの日か自分の展示会を開くのが私の夢です」――。陶芸作家を目指す伊野君江さん(33、3世)は10月18日まで開かれていた第9回文協総合美術展に「平和への願い」をテーマに作品3点を出展した。作品に込められた思いを聞いた。

◆「一瞬」
 原爆の核爆発によって生じるキノコ雲を上から見た様子を描いた作品。急上昇する火球が周囲を吸い込み、一瞬のうちに何もかも焼き尽くすような色をイメージし、釉薬(ゆうやく)には鉄赤釉を使用した。同作品には、伊野さん自身が広島平和記念資料館で「8時15分のまま止まった時計」を見た時に感じた違和感を表現するために、意図的に「ひび割れ」が施されている。また、「ひび割れは見た人に対して、どこか不自然な印象を与えます。そこから、過去から未来へと絶え間なく流れるはずの時の流れを永遠に止めた一瞬の惨事を想起させられたら」と説明した。

◆「黒い雨(壺)」
 黒と青の色粘土で仕上げた壺を千羽鶴で一杯にした作品。伊野さんは「平和への願いを込めて、一羽一羽折り込んだ。一人一人が平和の気持ちを持っていれば、黒い雨は二度と降ることはないと信じています」と話す。

◆「涙ポロポロ(磁器)」
 作品自体が泣いているように表すために、液体の釉薬を使用。作品の外形については、「戦後の世代ではない私たちにできることは彼らの涙を自分の手で受け取ること」との自身の思いを乗せ、受け取っている両手を模した丸みのある形へと仕上げた。

 陶器ではなく磁器にしたのは、「あの時代に生きた人たちは現代日本に漂う閉塞感以上に、凍てつくような厳しさにさらされていたと思う。いくら想像してもあの時代の厳しさを知ることはできません。そんな当時の厳しさを、できるだけ冷たい材質にすることで表現した。陶器よりも磁器の材料の方が耐火度が高く、材質を触った時に冷たい感じがするので」と説明した。

 なお、伊野さんの人物紹介記事は後日、改めて掲載する予定。

2015年11月10日付

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