聖市にジャパン・ハウスが開館 日本文化発信、中南米の拠点に

聖市にジャパン・ハウスが開館 日本文化発信、中南米の拠点に
落成式のセレモニー後、麻生太郎副総理(右手前)との懇談会に臨む日系社会の代表者ら(4月30日、ジャパン・ハウス)

初年度は6万3000人の来場見込み

聖市にジャパン・ハウスが開館 日本文化発信、中南米の拠点に
ジャパンハウスの最初の企画展で展示された竹を使ったオブジェ(4月30日、ジャパンハウス)

 日本の伝統文化や最先端技術などの情報を発信する海外拠点「 ジャパン・ ハウス」(JH)が4月30日、サンパウロ(聖)市パウリスタ大通りにある同所で開館した。落成式にはテメル大統領やヌネス外相らブラジル政府要人も多数、参列。来伯してあいさつに立った麻生太郎副総理兼財務相は「ステレオタイプでない日本の姿を知ってもらい、新たな活力を生むためのプロジェクトにしたい」と期待を込めた。

 JHは日本の文化や地方の魅力発信を通じ、海外に「日本ファン」を増やすのが狙い。世界最大の日系社会の存在に加え、中南米の経済・芸術・文化の中心であることから聖市に設置が決まった。英国(ロンドン)、米国(ロサンゼルス)に先駆けてのオープン第一号で、「中南米全域への情報発信の拠点」(薗浦健太郎外務副大臣)としての役割も期待される。領土問題や歴史認識など政策的な広報活動も行い、日本の「正しい姿」を海外に発信していく計画だ。

 外務省の戦略的対外発信拠点室の中原直人室長は「日本経済が右肩上がりの時代は終わった。何もせずに、海外の関心が我が国に集まる状況にはない」と語り、積極的な情報発信の重要性を強調。日本の理解者を増やすとともに、海外のオピニオンリーダーに日本の魅力が浸透すれば「政策決定に重要な影響を与えることもできる」とJHの意義を訴える。

 パウリスタ大通りの一等地にオープンしたJHは3階建て。和紙やヒノキを使った建物のデザインは新国立競技場の設計などで知られる建築家の隈研吾氏が監修した。日本食を提供するレストランやカフェ、工芸品を販売する店舗を併設し、芸術作品の企画展やセミナーなどを行う多目的ホールも備える。

 外務省は、サンパウロのJH運営で2015年度から4年間で計37億円の巨額予算を計上。初年度の来場者6万3000人を目標に掲げる。メディアの露出件数やサイトの利用者数などを基準に情報発信の効果を分析し、19年度以降の事業継続の有無を判断していく。

 当日の落成式にはテメル大統領以下、要人が多数参加し、ブラジルメディアにも大きく取り上げられるなど期待が高まるJHだが、船出に当たっては課題も多い。

 JHは、長年にわたってブラジル社会の信頼を勝ち取り、日本のイメージ向上に貢献してきた日系社会との連携の青写真をまだ、示していない。コロニアが培ってきた日系文化とは一線を画す運営方針を打ち出しており、ブラジル都道府県人会連合会(県連)の山田康夫会長は「JHの趣旨は応援している。ただ、我々の意見が運営に反映されることはないだろうという諦めもある」と複雑な心境を語る。

 経済産業省が主導する対外情報発信事業「クールジャパン」と、外務省が中心となるJHの違いも見えにくく、省庁縦割りの縄張り争いの様相を呈しているようにも見える。日本国民の関心の低さを示すように、これまでのところ、日本国内の報道ぶりも低調。JHと同様の対外発信拠点を設ける英国やドイツ、北欧などでは、いずれも思うような成果が上がっていないとの指摘もある。

 JHは、地元のニーズに応じた情報の提供方法を工夫するため、現地事務局に企画・運営を任せる。「日本の見せ方」については現地の視点を取り入れた柔軟な発想を重視しており、従来の官製情報発信と一線を画した、新しく、野心的な取り組みだ。6日に一般公開が始まり、7日には音楽家の坂本龍一氏らによる記念コンサートも開かれる。華々しいスタートを切るJHが、長期にわたる情報発信拠点として存続していけるかは、今後の関係者の知恵と努力にかかっている。

2017年5月3日付

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