脅威のモンスターペアレント㊤

自己中心的な親が増加        東 周一郎
 1年ほど前から、パライーゾライン社の前田茂生社長のご厚意で、インターネット上で日本の民放を視聴させてもらっている。日本の受信ボックスから  時間インターネットで発信しており、きれいな画面でリアルタイムの9チャンネルのTV放送が楽しめるものだ。NHK以外の民放のニュースが視聴できる。ブラジル情報ばかりでなく、日本の情勢が知りたくて、TV朝日やTBSなどの民放放送を見ている。そこで知った「父母会のモンスター」の存在には驚かされた。
         ◇
 モンスターペアレントとは、学校に対して自己中心的で理不尽な要求をする父母会の親を意味する。
 向山洋一氏が考案命名したとされる。氏は東京学芸大学社会科卒業、日本の教育者である。東京都大田区立小学校の教師をしながら、NHK「クイズ面白ゼミナール」教科書問題作成委員、千葉大学非常勤講師、上海師範大学客員教授なども務めてきた。現在教師を退職、「教育技術法則化運動」(TOSS)の運営に力を注いでいる。著作多数。教育界で最も著作を出している。TOSS代表、日本教育技術学会会長のほか3つの教育関連団体の座長も務める。

 モンスターペアレントの実態にあきれてしまい、開いた口がふさがらない。例えばこうだ。
(1)某小学校の運動会で、100メートル競争で走ったわが子が、ゴール寸前で転んでしまった。撮影していた親が「トップで走っていた息子は、一等になるはずだった。競争をもう一度やり直すべきだ」と要求。

(2)某小学校の学芸会の出し物が「白雪姫」。主人公の白雪姫希望者が多く、女子生徒の親たちが大騒ぎとなり、異例の女子生徒全員  人の主人公の白雪姫の演劇になった。

(3)新任の高校女教師の体育時間で、サッカーをやっていてポールに頭をぶつけて耳から血を出した。驚いた教師は、保健室へいかず最寄の外科病院へ連れて行き、全治5日の怪我。駆け付けた母親の言い分が「学校内で怪我をしたのは先生の監督不足。したがって、病院までのタクシー通院費、治療費は学校が負担すべき」と要求。

(4)下校後、小学生の親から先生あてに電話。「うちの息子がご飯時に箸の持ち方が変だ。学校では箸の持ちかたすら教えないのか。教育委員会へ訴えてやる」と。

 基本的には直接教員にクレームを行うものが多いが、校長や教育委員会など、より権限の強い部署にクレームを持ち込んで、間接的に現場の教員や学校に圧力をかける形式が増えているという。

 アメリカでは、ヘリコプターペアレントという用語があるそうだ。子供の就職の面接についてくるような過保護の親を指す用語であり、日本のような苦情および訴訟そのものを意識しての用語ではない。
 かつては子供たちのなかにマザーコンプレックスと呼ばれる精神的な障害について紙面でさわがれたこともあった。また、アメリカでは最終的には訴訟でけりがつくこと、学校も含めてどのような組織にも顧問弁護士が存在することなどから、法的根拠のある要求でなければいくら校長にクレームを出しても埒(らち)があかない。

 そもそも、訴訟社会であるため、単に訴訟を起こすからといって問題視されるわけではない。
 また、最近は自分の子供に対しても自己中心的な要求を繰り返す親が増えているとし、これも、いわゆる「モンスターペアレント」と同様、教育費の負担などから子供に対して消費者意識・権利意識が高まっていることが原因と推測される。
 一例に次のような実態も取材されていた。

 年収数千万円の裕福な家庭の子供の給食費が1年近くも滞納されていた例があった。理由は小学生が家に帰って両親に「学校給食がまずくて、とても食べられない」と話していることが原因で親が給食費を払っていないのだそうだ。
 「モンスターペアレント」という語が登場する以前から、こうした問題を「親のイチャモン」として研究してきた大阪大学大学院の小野田正利教授によると、こうした保護者が目立って増え始めたのは1990年代後半からであるとされる。
 また、教授によると保護者を「モンスター」にしているのは、「モンスター」という言葉を使っているマスコミや教育現場であるという。「モンスター=人間でない」ことで、保護者との関わりを拒否しているとも言う。

 こうした保護者については世代の問題が指摘されている。小学校2年生の保護者を対象としたアンケート調査のクラスター分析をもとにターゲット・プロファイリングを行った。それによって、「既に子育てを経験している、経済的な余裕は無いが教育ママ度はそれなりに高い、パート勤務の母親」が、学校への信頼度の低さを示す六つの指標においていずれも突出した数値を示すことを明らかにしている。そういった母親を「生活切迫型パートママ」と命名している。

 その他、地域の人間関係が希薄になった結果、かつては地域社会が緩衝材となっていた個々の親の不満が直接学校に持ち込まれるようになった状況も背景にあるのではないかという意見も多い。(つづく)
2010年6月1日付

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