風土から生まれる物㊦ 念願のブラジリアへ

風土から生まれる物㊦ 念願のブラジリアへ
長年使用した登り窯(背景)と鈴木さん
風土から生まれる物㊦ 念願のブラジリアへ
アトリエ2に展示されている作品群

◆脳梗塞を克服

 1983年、焼物師・鈴木章子さん(88、東京)は、焼物を志す同志たちの協力も得て、憧れのブラジリアで個展を開催した。鈴木さんは「自分の人生を180度変えてくれた、ブラジリア市の光景に感動した。御礼ができて嬉しかった」と振り返り、「ブラジルが私の人生を支配してしまいました」と笑う。

 その後も各地で個展を開き、2003年には焼物師としての50年記念展をサンパウロ(聖)市カーザ・ブラジレイラ美術館で、06年にはシティグループ(投資銀行)文化スペースで自身の回顧展も開催した。直近では、今年1月SESCイピランガで「鈴木章子の『宇宙展』」を開催している。

 また、12年には聖州コチア市に2番目のアトリエ・登り窯「あけぼの窯」を築き、同アトリエは自身の作品約50点を展示する美術館の役割も兼ねている。現在では弟子たちの制作場としても使用されており、弟子たちが主催してアトリエ展を開催するなど、次世代の焼物師を育成する場にもなっている。

 鈴木さんが自身の成熟を感じていたという15年頃、脳梗塞を患った。後遺症で左手が思うように動かなくなり、手ろくろを扱うことが難しくなってしまった。鈴木さんは「やっと理想だった焼物ができると思い始めた頃だった」と語り、自身のテーマとして言い聞かせてきた「永遠に、何千年も生きる・命のある物」に近づいた矢先だったという。

 それでも、手ろくろを回して焼物を作り続ける鈴木さんは「新しい焼物が、できるようになりました」と病後の自身の作品を見つめる。11月にはSESCビリグイの開館式で、鈴木さんの焼物が壁面に飾られたという。鈴木さんは「飾ってもらえるのは、素直に嬉しいです」と笑顔を見せる。

 また、日本で修業を始めてから焼物師として60年以上にわたって焼物を作り続けた鈴木さんは、「『これが本当の焼物です』とは言ったことがない。これが現在の私です」と常に言い続けてきた。(戸)(おわり)

2017年12月21日付

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