ブラジルの未来を切り開く日系人経営者 (84) 伊藤 悟 ㊦

ブラジルの未来を切り開く日系人経営者

82歳になったいまでも尽きない事業ロマン
優良会社を育てた経営3か条と後継者づくり

グランジャ・スマレー 社長 伊藤 悟

 ここで伊藤の略歴を辿ってみよう。1936年・昭和11年1月11日と全て1並びで生まれ、広島県出身の父・八郎と母・アキミとの間に3男として生まれた。2人の兄は学力優秀な模範生で京大など有名校に進学した。「冷や飯の3男坊」と自ら語る伊藤は大学には入学できなったものの、頭がよく少年期から先が見え度胸もよかった。広島で9歳の時に原爆を体験。父はまじめで厳格な人だった。しかし母は「自分を信頼して行動のすべてを任せてくれたし思い切り甘えられた」。移住を決意した時、父は「始めは行かんでもいい」といって反対していたが、「成功も貧乏もお前次第、移住してやってみなさい」と、最後には「いい子には旅をさせる心境」で息子をブラジルに旅立たせた。

 それから64年、ブラジル伊藤家の家族構成は妻の好江は日系3世、知り合ってから僅か56日目で結婚した。長男・英司は販売全般を担当し50歳、次男・秀樹は会計と養鶏舎を担当し48歳、3男・三郎は敷地内の建築全般を担当し35歳、長女・美智子は既婚、4男・竜誠は大学院生で24歳。そして孫が10人いる。子供は全て米国やカナダに留学させている。

 

 一方で経営者としての伊藤はブラジル盛和塾の会員だが、この2年間は欠席している。病気が理由である。しかしこう答える元気がある。「私と他の塾生との大きな違いは理論哲学と実践哲学の違いだ」と経営者として実戦で鍛え上げてきた絶対的な自信を持っている言葉だ。稲盛イズムは会社経営にも取り入れている。それがアメーバ経営だ。具体例として建築部や鶏糞部など専門家を自社で育成しており、電気工、車のメカ技術者、洗車技術者など、部門毎に分業化してアメーバ方式で経営の効率化に努めている。

 

 いま優良会社を育て上げた伊藤には経営3か条がある。経営はまず利益を上げよ、同社の利益性向は高い(それは飼育している鳥の品種がよくなったことと並行している)、また最先端の鶏卵用機械を導入するためコンテナ25台を使ってイタリア、オランダ、ドイツなどから取り寄せて、合理化とさらなる高品質化に励んでいる。後継者を育てよ、92年頃に親子喧嘩で子供3人が揃って家を出て行ったがその日に戻ってきた、それ以降、親子の信頼関係が一挙に深まった、いま男盛りを迎えている息子3人が同社を支えており、会社経営と事業推進の核になっている。社会に報恩せよ、昨年スマレー市の名誉市民賞を受賞、日系人では初めての受賞でスマレー市日系人の顔になっている。道を使ったり道路を舗装したりまた警察署を作り小学校を作り、こうしたボランティア活動が認められた。

 

 現在、伊藤は糖尿病が悪化して人工透析を受けている。その合計点滴回数は2008年から現在まで計1462回に達しているという。1週間4回病院に通いながら経営の最前線で陣頭指揮をとっているのが日常だ。酒たばこは一切やらず仕事漬けと友人との歓談や食事会などで余暇を過ごしている。82歳になったいまも旺盛な事業欲は衰えを知らず常に志を持っている事業家だ。これからもう一仕事あるという、それは「最先端の技術とノウハウを使って世界で誰も真似のできない最高水準の養鶏生産工場をつくることだ」と言って取材を結んだ。(敬称略 文責 カンノエージェンシー代表 菅野英明)

2018年3月28日付け

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