INPAから「生きた博物館」を マナティー保護施設に加えて

INPAから「生きた博物館」を マナティー保護施設に加えて
粉ミルクを飲む子どものマナティー

「科学の家」の展示改修も実施

INPAから「生きた博物館」を マナティー保護施設に加えて
プロジェクトを説くWRCの幸島教授

 【既報関連】国際協力機構(JICA)、京都大学野生動物研究センター(WRC)、国立アマゾン研究所(INPA)が連携したプロジェクト「フィールド・ミュージアム構想によるアマゾンの生物多様性保全」では、生きた博物館「MUSEU NA FLORESTA」構想が掲げられている。研究前線基地「フィールド・ステーション」、熱帯雨林上層部(ZF―2)タワーに続いて、INPA内「科学の森」では、保護されたマナティーのプール浄化施設が増築され、「科学の家」の展示改修も進む。アマゾン保護林の生物多様性保全のため、周辺住民の環境教育にも焦点を当てたプロジェクトになる。

 1952年に設立されたアマゾナス州マナウス市所在のINPAは、アクレ州、ロライマ州、ロンドニア州に置く支部も含め、38ヘクタールの広大な敷地を有する。

 95年からは、一般市民の自然科学に対する理解、関心の高まりを意図した教育を目的に、うち13ヘクタールが「科学の森」として開放されている。

 科学の森内では、絶滅危惧種であるマナティー保護施設が設置されており、食用として密漁、漁師の網に引っ掛かる事故などで傷ついた子どもの個体が2年間、大人の個体が5年間それぞれ保護され、年々保護数が増えていることで、許容量15頭ほどの水槽に、現在は約3倍のマナティーが飼育されている。

 「アマゾンのシンボル」であるマナティーは1974年から狩猟が禁止されているものの、闇市場での流通が止まらず、生息地のプルス川周辺では、食肉としての乱獲が後を絶たない。

INPAから「生きた博物館」を マナティー保護施設に加えて
現在の「科学の家」展示室

 アマゾン川主流のネグロ河周辺の保護区では、絶滅危惧種に指定されているアマゾン固有種の乱獲が一向に収まらない現状がある。マナティーの他にも「生きた化石」と呼ばれるピラルクーなどの古来魚、多種多様な鳥類、ジャガーなども同種に指定されており、乱獲を防ぐための環境教育が急務となっている。また、同種が増えるのには、熱帯雨林の奥地や、濁った水の中で生きる生き物の個体数が把握し辛いこともあり、生態系の解明も急がれる。

 同プロジェクトの日本側リーダーで、WRCの幸島司郎教授(63、愛知)は、マナウスがアマゾン熱帯雨林全体の中心に位置し、200万人以上が居住していることを説明。そのことを踏まえて、「周辺には多様な森があり、生物多様性において物凄く重要な場所だが、都市の拡大によって脅かされている。それを解決するためには、絶滅危惧種である動物を守るだけでなく、アマゾン周辺、特にマナウスの人たちに、身の回りの自然を守る大切さを知ってもらわなければいけない」と話し、「それに必要な場所、環境教育ができる人材が少ない」と現状を語る。

 科学の森のうち、「科学の家」では、現行のアマゾン固有種の剥製(はくせい)展示などから、改修によって環境教育を主目的にした研究成果の展示などに刷新され、11月頃の完成を見込んでいる。

 ブラジル側リーダーで、INPAのヴェーラ・ダ・シルバさんは「箱に納まった博物館ではなく、今回の構想では、自然により近い環境で、生きた動植物を皆さんの目で見てもらいたい」と語った。

2018年5月17日付

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