JICA日系研修OB・OG訪問

JICA日系研修OB・OG訪問
吉沢隆ジュリオさん

新時代の料理人 日本の食文化を広報する吉沢さん

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寿司カウンター
 今回のJICA日系研修OB・OG訪問は業種別としては初登場の「和食」ビジネス振興研修、若き経営者そして料理人の日系3世吉沢隆ジュリオさん(29歳)が経営するサンパウロ州ブランガ・パウリスタ市の日本レストラン「隆」を訪問した。

 吉沢さんが福岡県北九州市の北九州国際技術協力協会が受入先となり、2016年11月5日からの1カ月間に行った研修ではレストラン経営におけるマーケティングや配膳等の講座、寿司等日本食の外食現場は元より、蕎麦打ちやたこ焼作り、料理を支える味噌・醤油・麹といった食材・調味料の生産工場までを見学する徹底ぶりだった。

 研修以前にブラジルでの日本食レストラン経営について、吉沢さんが問題視したのは政治経済の不安定さと食材となる魚介類の高価格化から来るコスト面の問題、そして日本食ブームこそ結構だが、地方市のブラガンサ・パウリスタでさえも13店に増えた競合店との競争だった。

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糀工場訪問
 ブラガンサ・パウリスタ市でブラジル人に対する日本食文化を最初に広めたのはロジジオ(食べ放題)やポールキロ(量り売り)といった大衆食堂でレストラン隆の売れ筋メニューも手巻寿司とやきそばであるが、日本研修を終えた吉沢さんがさらなる顧客開拓として初めたのが「寿司のもうひとつの食べ方」。ブラジル人にしてみれば寿司ネタはほぼ鮪にサーモンだけだが、実は数十種類の寿司ネタが存在することを知ってもらい、もっと美味しく調理された日本料理があることを伝えて行きたいとしている。

 サンパウロ市の高級寿司店では結構見慣れた風景だが、その日に仕入れた最良のネタだけを注文する「お好み寿司」や寿司職人への「おまかせ」で楽しむのが寿司本来の食べ方だが、どっこいレストラン隆でも富裕層の常連達が吉沢さんの握る寿司を目当てに日々来店している。

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醤油工場訪問
 そしてカンピーナス・カトリック大学経済学部卒の吉沢さんが新時代の顧客営業として実行したのがWhatsApp(対話アプリ)を利用して寿司常連客約30人のスマートホーンにその日仕入れた寿司ネタをいち早く情報提供する試みだった。

 最上客の非日系ブラジル人の地元企業経営者にいたっては来店するといつも眼で合図、日本酒を飲みながら「おまかせ」を待っているとか。

 勘違いなきために説明しておくが、サンパウロ市高級店のように1人あたりの客単価が500レアルという事はなく125レアル程度でしっかり寿司を堪能してもらっているらしい。

食材の徹定利用と細工

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そば打ち実習
 さらに日本で学んだことは食材の徹底利用と細工、他のレストランにはない新しい材料を使った料理の開拓やコストを下げるために無駄なく食材を利用する術を学んだ。 ブラジルの寿司現場では魚のかなりの部分が寿司ネタとして利用されずに廃棄されたり、安い魚種が利用されていなかったりしている。

 例えばヒラメの縁側といった部分がブラジルでは捨てられていたり、鰺や鰯といった光物が寿司ネタになることがまだ少ないのが現実、日本から帰って寿司ネタのひとつとして始めたのが鰺のタタキ寿司、そして通常の寿司に海苔、香味野菜、鰹節等で細工をほどこして顧客から好評を得ている。 さて、29歳で店主という吉沢さん、その人となりとこれまでの経緯を紹介したい。

 父ネルソン(62歳)母アリセまちこ(58歳)の長男としてサンパウロ市で生まれた吉沢さん、父方祖父が北海道、母方祖父は鹿児島県からの移住者。

 3歳で両親と共にブラガンサ・パウリスタに転居、家業はポテトチップス工場だった。

 ブラジルの教育課程に通学する傍らブラガンサ日本語学校に5歳から10歳まで、日本食のプロになる準備としてさらに18歳から21歳の間にも日本語を学んだ。

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たこ焼き実習
 子供の頃から料理が好きだった吉沢さんが日本食の現場に入ったのは13歳、中学校に通いながら先に営業していた日本レストランにアルバイトとして入店。

 5年間の就業を経て18歳でテーブル7つの小さなレストランを父母との3人で開店。

 その間、大学にも通う忙しい日々を送ったが開店2年目で店の経営も軌道に乗り、現在は夜間のみの営業で80人を収容できる店舗に拡大、従業員も13人に増えた。

 2006年には両親が経営していたポテトチップス工場を閉鎖して家族3人がレストラン業に専念、2005年当時には3店だったブラガンサ・パウリスタの日本食レストランは先の通り13店と競争も激化してきた。地方ということもあってか、時々日本食の食べ方を知らないブラジル人のお客もやってくるが、そんな時は食べ方をやさしく教えるように努めている。

 まだ結婚はしないの?という記者の無神経な問いに「実は近々、非日系ブラジル人の彼女と結婚式を挙げます」と嬉しい言葉が返ってきた。 

 記者が今回、取材の前後で大きく認識を改めたのはレベルの高い日本食を提供できる料理人は今やサンパウロ市の日本食レストランに限らないということで日本の旅番組ではないが地方に名店あり!と評判になる日も近いだろう。

2017年2月24日付

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